かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

塙幸成監督『初恋』(2006年)

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高校生のみすずは、小さい頃から孤独だ。みすずの母親は小さい頃、兄を連れていなくなったきりだった。ある放課後、みすずはとある場所に足を運んでいた。目の前にはBというネオン看板。みすずの手に握られたマッチの名と同じだ。数日前、兄が突然現れ手渡したマッチだった。店内に進むと、彼らはいた。兄の亮、女優ユカ、浪人生タケシ、肉体派テツ、お調子者ヤス、そして東大生の岸。仲間に加わったみすずの生活は少しずつ変化していく。そして岸に対して生まれた切ない感情…。そんなある日、岸がみすずに驚くべき相談を持ちかける。


(「goo映画」より)


1968年に起きた「三億円事件」の犯人は、18歳の女子高校生だった、という仮定から描かれた「どこまでも純粋で、どこまでも切ない」初恋の物語。


この映画は、「三億円事件」の犯人を新解釈のもとに推理した、というようなものではなくて、事件を借りて<孤独な少女>の心のなかをていねいに描いてみせた秀作でした。


60年代後半の東京の街。権力が、体制が、大人たちが醜くおもえた反抗の時代。「B」という名前の汚れたジャズ喫茶に、行き場所を失った若者たちがたむろしていました。そのなかのひとり、岸(小出恵介)という青年から、権力へ復讐するためにと、みすず(宮崎あおい)は、三億円強奪の話をもちかけられます。


宮崎あおいの微妙に変化する表情、その陰影がとても美しく感じられる作品でした。