かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

西川美和監督『夢売るふたり』(公開中)


赤羽の立呑み「いこい」で焼酎ハイボールを4杯。いい気持ちで埼京線に揺られながら、川越へ帰る。


川越駅へ家人が迎えにきていたので、クルマでウトウトしながら、「ウニクス南古谷」へ。次の上映時間12時15分まで、1時間半ほど待ち時間があったので、家人は買い物にいき、わたしはあいてるベンチで横になって、五木寛之親鸞』を読む。



「ゆれる」「ディア・ドクター」の西川美和監督がオリジナル脚本で描く長編第4作。料理人の貫也と妻の里子は東京の片隅で小料理屋を営んでいたが、調理場からの失火が原因で店が全焼。すべてを失ってしまう。絶望して酒びたりの日々を送っていた貴也はある日、店の常連客だった玲子と再会。酔った勢いで一夜をともにする。そのことを知った里子は、夫を女たちの心の隙に忍び込ませて金を騙し取る結婚詐欺を思いつき、店の再開資金を得るため、夫婦は共謀して詐欺を働く。しかし嘘で塗り固められた2人は、次第に歯車が狂い始めていき……。主演は「告白」の松たか子と「なくもんか」の阿部サダヲ


(「映画.com」から)


映画公開初日。待望の西川美和監督の新作です。もうすこし混んでいてもいいのでは、とおもうけど、この「ウニクス南古谷」でわたしたちが見る映画は、いつも満員からは遠いようです。おかげで、ほとんど好きな座席を確保して、作品に集中できるのですが。


夢売るふたり』は、小料理屋を焼失した夫婦が、結婚詐欺をやって、もういちどお店をはじめるための資金集めをする話、というわかりやすいストーリーですが、映画の感触は、それほど単純ではないです。


松たか子演じる奥さんは、夫の「結婚詐欺」を陰で演出しているくらいなんですけど、同時に夫が新しい女性に深入りしていくことに、心の底では、嫉妬している。


ふだんは、目的のためと割り切っていながら、夫が朝になっても帰らないときなど、その抑えていた嫉妬の感情がメラメラ燃えあがってくる・・・その感情のサスペンスが、みどころです(笑)。


西川監督は、『蛇イチゴ』でも『ゆれる』でもそうでしたが、登場人物の日常的な心理サスペンスを描くのが天才的なひとだとおもいます。


松たか子がいいですよ。妻の日常の奥まで演じているので、松たか子の素の生活をのぞき見しているような錯覚を覚えます。これは監督が女性だから、ということもあるかもしれません。


結末の展開には省略があり、「?」という、わからないマークが残ります。


結婚詐欺にあったひとりひとりの女性は、どうやら新たな生活をはじめたようですが、かんじんの主人公の夫婦は、もういちどいっしょに再スタートを切れるのか、離れ離れになってしまうのか、解釈はいろいろ想像できそうです。