かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

瀬戸内寂聴著『いのち』と映画『最低。』(12月18日)。

12月18日、月曜日。川越を出て、東武東上線→池袋→山手線乗換え→新宿。


新宿3丁目の「角川シネマ新宿」へ、瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)監督の『最低。』を見にいく。



早く着いたので、近くの喫茶店ルノアール」で休憩。電子書籍で、瀬戸内寂聴著『いのち』を読む。寂聴さんが95歳で書き上げた最後の長編小説、となにかで読んだ。本人の言だったかもしれない。


いのち

いのち


先に逝ってしまった河野多惠子、大庭みな子などの友人・知人との交流を回想しながら、「死」との向かいあい方に思いをはせる、私小説的な作品。


それにしても、寂聴さんの明晰な頭脳は、95歳になってもいっこうに衰えない。登場する河野多惠子も、大庭みな子も、ただ親しい友人として回想されているだけではない。


河野多惠子でいえば、信頼しているのに突然冷たく裏切ってくることがあった、あれはなんだったのだろうか、とふりかえる。大庭みな子の特殊な性癖と夫婦関係のかたちも、寂聴さんは共感しながらも、どこか奇異の目でみている。


小説家の目は甘くない。どれも、鋭い客観の目で描かれていて、これは回想録やエッセイではなく、あくまで小説なんだな、となっとく。


それでも全体的には、寂聴さんは明るい。前向き志向といってもいい。雑誌などで見る本人の言葉が先入観としてあるのは否定できないけれども、作品にもそれが出ている、とおもう。


人生には、予測できないこと、割りにあわない不合理なこと、がある。でも、それで悲観したり絶望しているわけにはいかない・・・そんなことを感じさせてくれる。



瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)監督の『最低。』は、「AV女優」をめぐる3人の女性のものがたり。


果てしなく続くかのような日常に耐えきれず、新しい世界の扉を開く平凡な主婦、美穂。家族に内緒で、AV女優として多忙な生活を送る専門学生、彩乃。奔放な母親に振り回されつつも、絵を描いている時だけ自由になれる女子高生、あやこ。そんな境遇も性格も異なる女たちの運命は、ある出来事をきっかけに動き始める…。


(『最低。』のオフィシャル・サイトより)
http://saitei-movie.jp


ひとつひとつの場面はていねいに描かれているので、見ていて退屈はしなかった。どちからといえば好きなタッチの作品。


ただ、むかしから安定志向だったね、といわれる平凡な主婦・美穂(森口彩乃)が、その変わりばえのしない日常を一歩踏み出すためにとった行為が、どうしてAV女優の門を叩くことなのか。どうして一気にそこへいくのか。・・・そこがわからない。ほかにいろいろな選択肢があるだろうに、とおもってしまう。こうした前提に共感できないと、作品にリアリティを感じられない。


主婦を演じた森口彩乃という女優は、とてもきれいなひと。次の出演作が公開されたら、もう一度彼女を見るために映画館へいくかもしれない。いや、きっといくだろうな(笑)。



美穂を演じる森口彩乃という女優に惹かれる。



半裸のベッドシーンに、ドキドキしてしまった。


最低。』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=8K_-1yI68Eo



歌舞伎町の「磯丸水産」へ寄って、ホッピーを飲みながら、まぐろ丼でお昼。ここのお店は空いていてゆっくりできるので寄るけれど、食べ物も店員も、もうひとつ。食後、まぐろ丼の腥い食感が残っている。しばらく、このお店へくるのはやめよう、とおもいながら新宿駅へ向かう。