かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

映画『1987 ある闘いの真実』を見にいく。

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2018年9月10日、月曜日。曇り。


「シネマート新宿」へ、チャン・ジュナン監督の韓国映画『1987 ある闘いの真実』を見にいく。


川越駅まで15分ほどの距離を歩く。陽が出ていないので歩いてみたけれど、かなり蒸し暑い。電車にのってからなかなか汗がとまらない。タオルで顔を拭きながら冷房でからだが冷えるのを待つ。


新宿駅東口を出て、紀伊国屋書店へ寄る。


雑誌「週刊金曜日」に、「日刊ゲンダイ」のニュース編集部長、小塚かおるさんのインタビューと、沖縄県知事選の記事が出ていたので買う。大手メディアがたよりないなか、テッテーして権力批判をやめないのが「日刊ゲンダイ」。小塚かおるさんは、その先頭に立っている女性記者。


新宿3丁目の喫茶「ルノアール」に寄って、30分ほど休憩。小塚かおるさんのインタビューや沖縄県知事選の記事を読む。



12時20分より、『1987 ある闘いの真実』を見る。



「1987、ある闘いの真実」予告編


空前の好景気「バブル」の幕開けに、日本中が浮かれていた1987年、飛行機ならたった3時間で行ける隣の国の韓国では、歴史をくつがえし、国民全員の人生を劇的に変えた大事件が発生していたーー。


すべての始まりは、一人の青年の「不可解な死」だった。警察に連行されたソウル大学の学生が、取り調べ中に命を落としたのだ。警察は心臓麻痺だと発表するが、裏情報をつかんだ新聞が「拷問中に死亡」とスクープし、大騒動へと発展していく。


この頃の韓国では、元軍人チョン・ドゥファン大統領が、軍事政権という名の巨大なハンマーで、国民の真の自由と平和を叩きつぶし続けていた。我慢も限界に達した人から、民主化を求める声が沸き起こり、正義と希望に燃える学生たちも立ち上がり始める。そんななか、平和な明日を夢見る純粋な願いを握りつぶした上に、ことの真相を隠し通そうとした政府に、国民の怒りは爆発する。だが、相手は韓国史上でも屈指の絶対権力だ。なぜ、ごく普通に働く人々や政治に関心のなかった学生までが、最後まで諦めずに闘うことが出来たのかーー?


歴史には、ある一定の時を経なければ、語ることのできない真実や裏の物語がある。遂に明かされ始めた(韓国民主化闘争)の全貌に迫る、衝撃の実話が完成した。


(公式サイトより)
http://1987arutatakai-movie.com


ことし、1980年の光州事件を題材にしたチャン・フン監督の『タクシー運転手 約束は海を越えて』が公開されたが、この映画を見るまで光州事件のことを何も知らなかった。韓国が民主化を獲得するまでに壮絶な闘いのあったことをこの作品ではじめて知った。


民主化を求める学生や市民のデモを、政府は暴力をもって弾圧。しかし、その事実は隠蔽され、国民には知らされない。光州の周囲は厳しい検問がしかれ、メディアも通ることができず、テレビや新聞は、政府が発表するままに、暴徒が暴れている迷惑事件としか報じない。


映画『タクシー運転手』は、この報道に疑問を感じ、現地にはいり真実を伝えようとしたドイツ人記者と、彼を乗せ、厳しい検問を突破したタクシー運転手の物語。事件の根幹は事実で、ドイツ人記者もタクシー運転手も実在のひと。ただ、そこに見せるためのフィクションがまじっている。韓国では1200万人が見た、という。


チャン・ジュナン監督の『1987 ある闘いの真実』も、実際の事件を題材にフィクションもまじえ、光州事件から7年後の韓国の民主化闘争を描いている。


主要な登場人物がおおいので、最初は戸惑っていたが、見ていくと自然に整理されてくる。主要人物の描きわけがうまい。『タクシー運転者』でもそうだったけれど、娯楽性をもりこむことも忘れていない。映画としておもしろく見られるように配慮されているのだ。


それにしても、こういう国家権力にとって知られたくない歴史を映画化できる韓国はすごいな、とおもう。それだけ民主化が定着しているということなのか。


日本でいまこういう映画をつくったら、どうなるだろう?ーーと反射的に考えてしまう。


メディアが権力に屈せず真実を国民に伝え、国民が結集して、きちんと権力に向かって声をあげれば、独裁政権をも動かすことができる・・・そういう勇気をあたえてくれる映画だった。



映画がおわるとどんより曇っていたが、そのぶん涼しくなっていた。いつもの立飲み「春田屋」へ寄って、やきとんとホッピーで遅い昼食をとりながら、雑誌「週刊金曜日」を読む。


週刊金曜日」には、『1987 ある闘いの真実』の監督、チャン・ジュナン氏のインタビューも掲載されていた。主役のひとり、催涙弾を浴びて死ぬ李韓烈(イハニヨル)を演じた人気俳優カン・ドンウォン氏が、本人から「この映画は絶対作るべきだ。ぜひ李君の役をやりたい」と、出演を快諾してくれたことなど語っている。