かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

吉田恵輔監督、安田顕主演『愛しのアイリーン』を見る。

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9月15日、土曜日。だいぶ涼しくなってきた。きょう夕方からひとに会うので、それまでひさしぶりに東京を散歩しようと漠然考えていたけれど、アパート「第二極貧荘」の窓をあけたら、雨。一気に1日の計画が崩壊する。で、上映中の映画を検索してみる。


気持ちにひっかかったのが、吉田恵輔監督、安田顕主演の『愛しのアイリーン』。詳しい内容はわからないけど、とりあえず見てみようと「第二極貧荘」から歩いていける「イオンシネマ板橋」へ見にいく。



『愛しのアイリーン』予告

「ワールド・イズ・マイン」「宮本から君へ」など社会の不条理をえぐる作品で知られる新井英樹が、国際結婚した主人公を通して地方の農村が内包する問題を描いた同名漫画を実写映画化。新井の漫画が映画化されるのはこれが初めてで、安田顕が主演、「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督がメガホンを取った。


42歳まで恋愛を知らず独身でいた岩男が、久しぶりに寒村にある実家に帰省する。しかし、実家では死んだことすら知らなかった父親の葬式の真っ最中だった。そんなタイミングで帰ってきた岩男がフィリピン人の嫁アイリーンを連れていったため、参列者がざわつき出し、その背後からライフルを構えた喪服姿の母親ツルが現れる。


(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/88623/


吉田恵輔監督は、『さんかく』という映画を見て好きになった。同棲生活も倦怠期にはいった男女のなかに、夏休みで、同棲している女性の妹が田舎から上京してくる。夏休みのあいだ、ここでいっしょに暮らしたい、という。女子中学生は、意識しているのかしないのかわからないが、下着姿で男の前に現れたりして、男の欲情をそそる。だんだんに男は、同棲している女性よりも、その妹に夢中になってくる。しかし・・・。


すけべ心、自己陶酔・・・がくわわって、ついには相手も自分を好きなのでは、とおもえてくるから、男の欲望は救いがたい。そんなダメ男をコメディ・タッチで描いた小品で、主演は、高岡蒼甫。『さんかく』以後、わたしのなかで吉田恵輔は注目監督のひとりになった。


さんかく 特別版(2枚組) [DVD]

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安田顕のはじめての主演は、横浜聡子監督の『俳優 亀岡拓次』(2016年)。新鮮な感銘を受けた傑作コメディだった(戌井昭人の原作も快作!)。


脇役俳優が主演という設定がじっさいの安田顕と重なる。安田顕演じる亀岡拓次は、いろいろな映画に出ているが、すべてちょい役。しかし、脇役としての信頼は厚く、いろいろな監督から、声はどんどんかかってくる。すぐに出番はおわってしまうので、地方ロケへいくと、居酒屋で一杯やるのがたのしみ。その居酒屋に美しいマドンナ(麻生久美子)がいて、亀岡拓次の心がときめく。安田顕が、絶品の当たり役だった。


俳優 亀岡拓次

俳優 亀岡拓次


俳優・亀岡拓次 (文春文庫)

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この吉田恵輔監督と安田顕が組んだのだからおもしろいだろ、と期待してみたが、わたしには微妙に期待ハズレだった。映倫区分「R15+」となっていたので、なぜっておもっていたが、要するに下ネタ満載で見ていて気恥ずかしいのだ。


農村に住む岩男(安田顕)は、40歳を過ぎても女性との縁がなく女に飢えている。その描写が、気どるわけではないけれど、見ていてつらい。コメディとはおもっても、えげつなさがわたしのなかで限界を越えている。


岩男は、外国人との集団見合いで、フィリピンの女性と結婚するが、言葉も風習もちがう女性がなかなかおもうようにならず、岩男の母は、「ここを出ていけ!」と女性にライフルを向ける。


とはいえ、この映画、ダメ男と、純粋で可憐なフィリピン女性の恋愛劇で、吉田恵輔監督の作風をきちんと継承していることは事実なのだけど、これまであった小品の慎ましさのようなものが消えて、ある一線を越えて露骨なのだ。自分の限界に挑戦した、ということなのかもしれないが、とてもひとにすすめる気持ちにはなれない。



上映時間が15分の差ではじまる、と都合がいいということで、引き続き「イオンシネマ板橋」で、映画『MEG ザ・モンスター』を見たが、これはまたあとで・・・。