5月21日、火曜日。雨。風が強い。
川越を出て、東武練馬駅の「イオンシネマ板橋」へ、本木克英監督、松坂桃李主演の『居眠り磐音(いわね)』を見にいく。
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坂崎磐音(松坂桃李)と小林琴平(柄本佑)と河出慎之輔(杉野遥亮)は、おさななじみ。
3人は、3年間の江戸の務めを無事に終え、そろって九州・豊後(ぶんご)関前藩(せきまえはん)にもどってくる。
しかし、帰る早々、河出慎之輔は、妻が不貞をしているという噂を真に受け、妻の舞(まい)を即座に斬ってしまう。
舞の兄は、小林琴平。妹の死を知った琴平は、舞の仇とばかり、おさななじみの慎之輔を斬りすてる。
そして、こんどは騒動をおさめるため、坂崎磐音が、小林琴平を斬らねばならなかった。
映画がはじまって、すぐにおさななじみ同士が斬りあう衝撃のシーンでスタート。
友だちを斬ってしまった坂崎磐音は、婚約者(琴平の妹)を置いたまま、脱藩、失踪する。
そして、長屋住まい。
昼はうなぎ職人として生計をたて、夜は両替商「今津屋」の用心棒として暮らすようになる。
ここまでが発端。
両替商「今津屋」のライバル業者などが派遣する悪徳浪人たちと、磐音が刃をかわして闘う本編が見せ場になる。
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話の運びは性急。原作は読んでいないけれど、長い物語を121分におさめたムリがあるのだろうか。
しかし、シーンのひとつひとつは見せ場が続くし、役者は生き生きしている。
時代劇、初主演だという松坂桃李が静かな表情で、刀をダラリとからだの前に下げる「居眠り剣法」をみせる。ただ、その刀をダラリと下げる剣法がどういう凄みと効果を発揮するのか、その後のチャンバラ・シーンを見ていてもわからない。映像的に「居眠り剣法」はまだ未完成なようにみえた。続編を作れば、もっと完成するのだろうか。
けっして強そうでない浪人を演じる松坂桃李の抑制された演技はよかった。
ヒロインは、小粋でやさしい町娘・おこんを演じる木村文乃。磐音の恋人役でないのがなんかいい。
内心磐音に好意をもっているようだが、磐音に置き去りにしてきた婚約者がいることを知ってからは、それ以上の感情を自分のなかで封じ込む。
男気のある町娘・おこんだが、木村文乃は、顔立ちがやさしいので、男勝りとまではいかない。
とくに徹底的な悪役を柄本明が演じる。顔も言動も醜く、気持ちのいいくらい同情無用の悪役。
先日見た中島貞夫監督の時代劇『多十郎殉愛記』は、不満ばかり残ったが、こちらはたのしめる作品だった。
松坂桃李は、現代劇もいいけれど、時代劇もにあうことがわかった。時代劇だからといって過剰な演技をしないのがいい。
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映画館の5階で昼飯。刺身丼のようなものだけれど、残りをお茶漬けにして食べられる定食を食べながら、ハイボールを飲む。
外に出ると風もだいぶ静かになって、雨はわかるかわからないくらいの小降りになっていた。