かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

荒井晴彦監督『火口のふたり』を見る(8月31日)。

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8月31日、土曜日。晴れ。


新宿武蔵野館へ、荒井晴彦監督の『火口のふたり』を見にいく。早く着いたので、近くの地下にある「ルノアール」へより、寺地はるな著『大人は泣かないと思っていた』の続きを、電子書籍で読む。


つるひめさんのブログで、この作家が紹介されていた。文章に抵抗感がなく、スッと作品の世界へはいっていける。連作短編小説で、1章ごとに脇役だった登場人物が主役になってすすんでいく。おもしろく読めた。





8.23(金)公開『火口のふたり』本予告


東日本大震災から7年目の夏。離婚、退職、再就職後も会社が倒産し、全てを失った永原賢治は、旧知の女性・佐藤直子の結婚式に出席するため秋田に帰郷する。


久々の再会を果たした賢治と直子は、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という直子の言葉をきっかけに、かつてのように身体を重ね合う。1度だけと約束したはずの2人だったが、身体に刻まれた記憶と理性の狭間で翻弄され、抑えきれない衝動の深みにはまっていく。




(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/90452/


賢治と直子は、従兄妹(いとこ)で幼なじみ。直子の両親の事情で、直子は賢治の家へあずけられたこともある。


ふたりは、おとなになって東京へ住んだころは、恋人関係にもなった。


直子の結婚の知らせを受けて、東京に住み、無職でぶらぶらしていた賢治は、故郷の秋田へ帰る。



しばらく離れていたのに、ふたりはすぐに打ち解けてしまう。お互いの心もからだも知り尽くしていた。


日常の会話がめんみつに、でも自然に描かれているのは、荒井晴彦監督の脚本の精密さに加えて、主演のふたり、柄本佑(えもと・たすく)と滝内公美(たきうち・くみ)の息のあった演技のせいだろう。ほとんどが登場人物ふたりだけの作品なだけに、ふたりにかかる比重が重い。


柄本佑は、富永昌敬(とみなが・まさのり)監督の『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018年)で注目し、石橋静河と共演した、三宅唱(みやけ・しょう)監督『きみの鳥はうたえる』(2018年)で、ファンになった。


だらしないような、その場その場で生きているような若者を演じながら、管理社会にコントロールされていない男の魅力を感じさせる。


滝内公美は、廣木隆一監督の『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)が印象に残っている。


東北の震災から、父とふたりで福島の仮設住宅に住み、ふだんは市役所に勤め、週末は高速バスで東京へやってきてデリヘル嬢として男性に奉仕する。


わたしには、彼女がなぜ週末デリヘル嬢になるのか、最後まで動機がわからなかったが、滝内公美という女優は魅力的で印象に残った。


いとこであり、幼なじみであり、かつて恋人だった男と女が再会。からだに刻まれた快楽の記憶がよみがえり、再び性愛に耽溺する、18歳未満禁止の映画。


登場人物は、ほとんどふたり。セックスシーンも含めて濃密な時間が流れる。


わたしは傑作だとおもったけれど、一般の評価はどうだろう?



この日は、午後から予定があったので、まっすぐ川越へ帰る。駅で妻の姉と妻がクルマで迎えにきていて、いっしょに熊谷へ向かう。


熊谷に住むわたしの弟をクルマでひろい、熊谷駅近くで従弟(いとこ)がはじめた居酒屋へいく。


居酒屋のなかに、レッド・ツェッペリンのおおきなパネルが飾ってあってうれしかった。従弟は、ポール・マッカートニーサザンオールスターズのファンで、居酒屋の名前は「稲村ジェーン」。