かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

映画3本(『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』 〜 『向田理髪店』 〜 そして今泉力哉監督『窓辺にて』)。


今泉力哉監督『窓辺にて』。







11月3日(木)。
妻の運転で、「ウニクス南古谷」へ、竹林亮監督の『MONDAYS 〜このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』を見にいく。




竹林亮監督『MOMNDAYS』。




職場(広告代理店)の一室にいる全員の、1週間が繰り返されるという話。


ひとりではなく、同僚がいっしょなので、タイムループに巻き込まれても、どこかのんびりしている。ひとりだけで、異次元に迷いこんだような焦燥感は感じられない。


タイム・スリップやタイムループに巻き込まれる映画を見たり、小説を読んでいると、どういう風にそこから脱出し、日常がもどってくるのかが関心の焦点になってくる。


2006年公開の『ルート225』(原作:藤野千夜中村義洋監督)では、多部未華子(中学生の役、ふっくらしていてかわいい!)が弟といっしょに、家の近所にいながら、微妙に地形がちがっていて、両親のいる家に戻れなくなる。


特定のテレホンカードからだけ、公衆電話で母と話ができるが、そのテレホンカードも残りがなくなっていく。


どうなっていくのかとおもって、興味津々見ていたら、結局多部未華子と弟は、元の世界へもどれず、異次元の世界の方に住む親戚にひきとられ、弟と別れて暮らすようになる。意外な結末がおもしろかった。




5分弱のダイジェスト版『ルート225』。YouTubeで全編も見られます。
www.youtube.com




『MONDAYS』の結末は、「な〜んだ」という気がしないでもない。


永久部長を演じたマキタスポーツが、「ドリフだよ全員集合」いかりや長介とイメージがダブった。






11月9日(水)。
新宿ピカデリー」へ、森岡利行監督、高橋克実主演の『向田理髪店』を見にいく。





『向田理髪店』。



ベテラン俳優の高橋克実が映画初主演を務め、直木賞作家・奥田英朗の同名小説を映画化。寂れた町で理髪店を営む親子を軸に、過疎化や少子高齢化、介護、結婚難など様々な問題に直面しながらも懸命に生きる人々の姿をユーモラスに描く。




(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/97234/


主演、向田康彦を演じる高橋克実がよかった。表情の小さな変化でこころのなかを表現するのがうまい。奥さん役の富田靖子も可憐。


同じ町に住む幼馴染に、瀬川真治(板尾創路谷口修一(近藤芳正がいる。仲がいい。こんな友人を、都会でみつけるのはなかなかむずかしいだろう。


息子の向田和昌(白洲迅も若いのにしっかりしているし、向田康彦は床屋さんだから、食べていくのに困らない技術ももっている。


「なんだ恵まれているじゃないか」
と、わたしはおもってしまう。


だから酔っ払った向田康彦(高橋克実)が、むかし都会を出て、また故郷へ帰ってきたことを「おれは負け犬だ」とかいって荒れるシーンが、おおげさで、この映画のなかで浮いているように感じられた。


「負け犬」だって?


この形容、もう古臭くないか。


若者が減って、だんだん高齢化していく村社会。いろいろと不満や不安があるかもしれないが、表現が凡庸すぎるように感じられた。


小津安二郎監督『東京物語お父さん(笠智衆のように、不満は心の奥に留めておいて、「おれたちはまだいい方だよ」というくらいであってほしい(*個人的な希望です、笑)。


といいつつも全体には、あったかくて好きな作品。





11月10日(木)。
イオンシネマ板橋」へ、今泉力哉監督の『窓辺にて』を見にいく。今泉力哉監督の新作。





ややこしい登場人物たち。





『窓辺にて』は、予告編を見てもどんな映画かよくわからない。しかし、予告編であらかた見えてしまう映画は、全編を見なくてもいいかも(笑)。
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2021年の公開映画が3本。2022年が3本(脚本だけも含む)。今泉力哉監督、本数だけみても、ノリにのっている。


そして最新作『窓辺にて』も期待を裏切らない。


長回しのシーンが続く。


長回しの緊張感のなかで、役者から台本にないセリフが飛び出しても、自然ならそれもいい、と、今泉監督はどこかで言っていた。


あらかじめ頭の中で決めたものより、その場のやりとりで生まれた偶然の効果を生かそうとする。そういう効果を生むような緊迫したシーンが『窓辺にて』は、多い。



夫(稲垣吾郎妻(中村ゆりがはじめて心のうちを曝け出してぶつかりうシーンは最高のクライマックス。


3組のややこしい男と女の糸のもつれが描かれるが、今泉監督は結論や解決は用意していない。観客に「あなたならどうしますか?」とそれとなく問いかけているような感じがする。


セリフが説明的でないのも、今泉監督の特徴。会話が流暢でなくて、ときどき笑ってしまう。


稲垣吾郎は、受け身のシーンが多く、「えっ?」という戸惑いの言葉を連発する。


小津安二郎の映画『東京物語では、笠智衆が、「やあ」とか「いやあ」とか意味のない受けのセリフを連続するのがおもしろかったが、『窓辺にて』では、稲垣吾郎が、相手に何かいわれても、それに返答する言葉がすぐに浮かばず「えっ?」という。


はじめは、ふつうに聞いていたが、繰り返しの効果で、だんだん「えっ?」が出るだけで笑ってしまう(わたしだけかもしれないが)。


娯楽作品のようにひとつひとつ説明されないから、あいまいなところもある。眠くなるひとがいるかもしれないけれど、疲れていたら眠ればいいし(笑)。


「川越スカラ座へ、今泉力哉監督『窓辺にて』の上映とともにやってきたら(だいたい半年くらい遅れる)、もう一度見たいし、監督の話も聴いてみたい。