かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

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梯久美子著『昭和二十年夏、僕は兵士だった』

昭和二十年夏、僕は兵士だった (角川文庫)作者: 梯 久美子出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2011/06/23メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (2件) を見る 著者の読み方は、梯久美子(かけい・くみこ)。 「web K…

中島京子著『小さいおうち』

小さいおうち作者: 中島京子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/05/01メディア: ハードカバー購入: 6人 クリック: 128回この商品を含むブログ (116件) を見る おもしろかった。文章がとても読みやすくて、登場人物の女中「タキさん」や、タキさんが大好…

梯久美子*1著『昭和二十年夏、女たちの戦争』

近藤富枝、吉沢久子、赤木春恵、緒方貞子、吉武輝子・・・5人の女性の戦争体験が収録されている。 なかでも、赤木春恵氏と吉武輝子氏の話が印象に残ったが、ここでは、吉武輝子氏の話を引用しておこう。 ★ 吉武輝子氏は、14歳のとき青山墓地でアメリカ兵から…

下岡友加著『志賀直哉の方法』〜「大津順吉」について

著者は「大津順吉」について、本文で詳細な分析を試みているけれど、最後に、自ら次のように要約している。 「大津順吉」は、語る<私>と語られる<私>との間にあからさまな距離を設け、語られる対象、世界の客体化を装いながら、逆に二つの<私>の癒着を…

下岡友加著『志賀直哉の方法』

志賀直哉の方法作者: 下岡友加出版社/メーカー: 笠間書院発売日: 2007/03/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 著者略歴をみると、著者の下岡友加(しもおか・ゆか)は、1972年生まれ。38歳か39歳の若さだ。 ★ 志賀直哉は、よく「事実をそ…

荒俣宏著『プロレタリア文学はものすごい』

プロレタリア文学はものすごい (平凡社新書)作者: 荒俣宏出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2000/10/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 37回この商品を含むブログ (14件) を見る ★ ホラー・笑い・エロスが横溢する「忘れられた文学」を現代の眼で新たに読み…

川本三郎著『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』

マイ・バック・ページ - ある60年代の物語作者: 川本三郎出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/11/26メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 66回この商品を含むブログ (54件) を見る 最初に映画を見てしまっているので、この本をよく映画化したなあ、とちょっ…

川上弘美『センセイの鞄』

センセイの鞄 (文春文庫)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/09/03メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 56回この商品を含むブログ (353件) を見る おもしろかった。 むかし高校の恩師だったおじいちゃんと、もうすぐ38歳のツキコさんは、町…

三浦しをん著『まほろ駅前番外地』

まほろ駅前番外地作者: 三浦しをん出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/10/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 62回この商品を含むブログ (88件) を見る 『まほろ駅前多田便利軒』の続編。前作で脇役にいた人物が今回はクローズアップされ、主人公に…

角田光代著『八日目の蝉』

映画もよかったが、原作もよかった。 強い力でグングン読まされてしまう。現実味の乏しい設定なのに、リアリティをもって迫ってくるのは、文章の力だろう。銀色に光る小豆島の海の描写は、映像よりも文章表現のほうがまばゆいくらいだ。

三浦しをん作『まほろ駅前多田便利軒』

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)作者: 三浦しをん出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/01/09メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 196回この商品を含むブログ (276件) を見る 多田啓介と行天春彦(ぎょうてん・はるひこ)。高校時代のふたりの同級生が再…

型を破ってゆく〜「志賀直哉対話集」より

小津安二郎は『晩春』を撮るとき、「自分には随筆を書くようなつもりだ」と、いった(杉村春子の言)。 小津安二郎の映画は、戦後ますますストーリー性が希薄になって、いわゆる一般的な映画から離れていく。それを小津は「随筆」と表現したのかもしれないし…

西村賢太著『暗渠の宿』

暗渠の宿 (新潮文庫)作者: 西村賢太出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/01/28メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 139回この商品を含むブログ (61件) を見る やっぱりおもしろかった。夏目漱石がどこを切っても均等にうまいことを、羊羹(ようかん)に例え…

志賀直哉と杉村春子の対談〜『志賀直哉対話集』より(1969年)

20代か30代のころ、神田神保町の古本屋、北澤書店*1で買った本が、本棚から出てきた。全編志賀直哉の飾りけのない<肉声>が伝わってきて、興味が尽きない。対談の相手も、いろいろだ。 ★ 目次を写してみると、 谷崎潤一郎「文芸放談」 天野貞祐「内村鑑三そ…

大山へ向かう峠茶屋のシーン〜志賀直哉『暗夜行路』より

暗夜行路 (新潮文庫)作者:直哉, 志賀新潮社Amazon わたしは、志賀直哉の『暗夜行路』は、全編を貫くテーマや思想よりも、細部で光るなにげない描写が好きだ。『暗夜行路』をしかつめらしく読む必要はなく、作者の見つめる視線の先を、いしょに楽しめばいいの…

つげ義春作「もっきり屋の少女」〜石井輝男監督『ねじ式』(1988年)より

つげ義春の作品のなかで、方言をしゃべるおかっぱの少女が登場する作品は、「沼」(1966年)、「紅い花」(1967年)、「もっきり屋の少女」(1968年)と3作ある。 ほかにもあるかもしれないが、こまかなことはぬきにして、とりあえずこの3作である(笑)。 …

西村賢太著「苦役列車」

苦役列車作者: 西村賢太出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/01/26メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 266回この商品を含むブログ (120件) を見る文藝春秋 2011年 03月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/02/10メディア: 雑誌購入: 1人 クリ…

鈴木健介編『地獄でヨーイ・ハイ!〜中川信夫怪奇・恐怖映画の業華』

小学生のころ、3本立ての映画館で怪談映画を見るのが好きだった。「四谷怪談」、「牡丹灯篭」、「累ヶ淵(かさねがふち)」、「番町皿屋敷」、化け猫もの、さらには現代もの(ひとのいない大きなビル、警備員が深夜の見回りをしていると、誰もいないはずの部…

成瀬巳喜男監督『女の歴史』(1963年)

現存する成瀬巳喜男作品は、失敗作も含めて全部見たい、とおもっている成瀬映画のファンだから、まずはこの作品も見られてよかったです。 そのうえでいうわけですけど、<女の半生>を描く、というような、大時代ドラマは、成瀬巳喜男の作風にあってないよう…

尾崎一雄、西鶴、志賀直哉

尾崎一雄は、小説読みの目利きだった。周辺の若い小説家の志望者は、尾崎を頼り、原稿を見せて批評を乞う。 そういう自身厳しい批評家であるから、よけいに尾崎は自身の作品にも厳しく、自分のなかの批評家が、小説家の部分を上回って、いよいよ書くことがで…

島村利正『奈良飛鳥園』

奈良飛鳥園作者: 島村利正出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1980/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る実在の人物、奈良飛鳥園の創設者、小川晴暘を主人公とする、実名小説です。端整な島村利正の文章が、最高の形で生きた傑作だとおもいまし…

成瀬巳喜男監督『あらくれ』(1957年)

原作:徳田秋声 脚色:水木洋子 撮影:玉井正夫 美術:河東安英 気丈な女性・お島(高峰秀子)が、頼りない男性たちのあいだで翻弄されながらも、持ち前の元気さで、困難を切り拓いていく。 頼りない男は、、、 上原謙 森雅之 加東大介 三人三様にふがいない…

斎藤一著『志賀直哉との対話』(深夜の読書から)

ナイルの水の一滴 奥付を見ると、昭和54年11月26日発行とある。西暦になおすと1979年。むかし読んだことがあるのはたしかだけど、それがいつだったのか、それに内容もほとんど忘れていた。ぼくの読書は、系統だてたりしてないし、読みながらメモすることもな…

シンシア・レノン著『ジョン・レノンに恋して』

ジョン・レノンに恋して作者: シンシアレノン,Cynthia Lennon,吉野由樹出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/03/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 101回この商品を含むブログ (7件) を見る ご存知のようにシンシア・レノンはジョン・レノンの先…