小さな工場の経営者川谷信次郎と、定職をもたずパチンコにいりびたっている青年野村和也、大きな銀行に勤める女子行員藤崎みどり、この3人が本作の主人公です。
このまったく関連しない3人の唯一の共通点は川崎市に住んでいることだけ。「邪魔」でもそうでしたが、何の関連もない3人の生活の細部が精密な描写で描かれていくんですけど、これがリアルでうまいんですよね。それこそしっかり3人の印象が読者にインプットされてしまいます。
それぞれ3人が容易に解決できない悩みを抱えながらのたうち回り、やがて一同に会してクライマックスを迎えるところなど、「おみごとです」というよりありません。奥田作品もっと読みたいです。