かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

志賀直哉「鵠沼行」

去年から志賀直哉写真)の短編を読み返しています。中・後期のものを「暗夜行路」からスタートしていろいろ読みましたが、今回は初期の作品集です。
こちらが若い頃は、志賀作品のなかでも刺激の強い初期のものが好きでした。後期になると小品や身辺ものなので、若い時ですと淡泊な気がしていました。
しかし、今回全時代の作品を読んでみると、その身辺もの、日記のようなものがおもしろいんですね。スジがないだけ、純粋に描写の細部が楽しめるんじゃないでしょうか。
今回の初期作品集では、「鵠沼行」がよかったです。子どもたちの船遊びの様子、川を泳ぐ小さな魚の動き、水の冷たさ、簡単な単語を並べて誰にもまねできない描写は、昔読んでも感心しましたが、今回も同じように新鮮に感じました。