かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

爆笑精神科医、伊良部一郎が活躍する〜奥田英朗著「イン・ザ・プール」(写真)

とにかく面白い小説です。
各短編小説の語り手(=主人公)は、それぞれ心に偏重をきたして、「伊良部総合病院」を訪ねます。ここに愛すべきニュー・ヒーロー(?)精神科医伊良部一郎がいるんです。この伊良部一郎こそ、この小説のもう一人の主人公です。短編はどれも独立していますが、全部に登場するのが、この伊良部一郎博士と看護婦マユミであります。

これがカウンセリングなの、という患者の疑惑をよそに、症状がどうであれビタミン注射がうたれます(笑)。伊良部は注射が皮膚にささるのを見て興奮する「注射マニア」。患者への質問と回答は、意表をつくものばかり。

「今日は出かけるから午後は休診にして」
と伊良部一郎がいうと、
「どうせ誰もきませんよ」
とかったるそうにいうのが注射担当のマユミさん。彼女はやや露出過多の看護婦でいつもソファーで雑誌を読んでいます。

この異色コンビ伊良部一郎、看護婦マユミのレギュラー陣に、新しい患者が飛び込んでくるところから物語りは動きます。

きっと1冊読むと、新しい「伊良部一郎依存症患者」が急増するのでは(笑)。
【END】