今日は成瀬映画特集、2回目。「放浪記」と「あに・いもうと」を見た。
林芙美子の原作を成瀬巳喜男が映画化。極度の貧困と男性運の悪さに苦しみながら、のたうつように生きていく主人公(高峰秀子)を、成瀬監督は過剰な演出をおさえて、怜悧な描写を重ねていきます。古い東京の町並みも郷愁がいっぱいでした。あえて美人にみえないように、メイクから歩き方まで工夫した、高峰秀子の熱演もみごたえがありました。
映画を見る限りでは、舞台になっている場所が特定できませんでした。室生犀星の原作を読めばわかるのでしょうか。随分田舎ですし、周辺には雑木林が繁っています。でも、映画のなかでは、新宿行きの直通列車が走っています。
まず、この村の映像がいい。むかし懐かしい薄汚れた路線バスがこの村へ乗客を運んできます。主人公家族の両親がやっている土手沿いの茶店(夏は氷、冬はおでんなどを売っている。つげ作品の「紅い花」に登場するお店に似ている)は、見ているだけで楽しい。
互いを愛しながら、反目する兄と妹が中心テーマですが、今見るとその背景になっている貧しい薄汚れた日本がなんとも魅力的で、そちらにもつい目を奪われてしまいます。