かぶとむし日記

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「男はつらいよ 寅次郎夢枕」を見る

男はつらいよ 寅次郎夢枕 [DVD]

シリーズ10作目。
久しぶりに寅さんの映画を見る。寅さんシリーズは、どの作品も繰り返し見ているけれど、「寅次郎夢枕」は久しぶりだ。これは、ぼくのなかで寅さんがはじめてマドンナから愛される作品として、強い印象が残っている。マドンナは、八千草薫

寅さんは、とらやの2階へ下宿している大学教授(米倉斎加年)の恋の使者に立って、その気持ちを幼馴染の千代(八千草薫)に伝えようとする。ところが、言葉が不足しているものだから、千代は寅さん自身の愛の告白と勘違いする。ここが作品のクライマックスだ。そしてなんと、シリーズ初のマドンナから「いいわ」というプロポーズ承諾の返事が寅さんに返ってくる。千代は、寅さんの愛を受けいれたのだ。

なのに、寅さんはそれを冗談にしてしまいます。あれほど恋の成就を求めていた寅さんがなぜ千代の承諾を受けようとしないのか、はじめて見たとき納得がいかなかった。いまでも、スッキリしたとはいえない。もっとも、寅さんが結婚してしまえばシリーズが終わってしまうというのが一番の理由だろうけど、それはまた別の問題で、作品の中のリアリズム、というのはそれ自身独立して考えられていいとおもう。

「寅さんは、なぜ千代の愛を受けなかったのか」

このぼくの疑問を晴らしてくださったら、感謝です。

寅さんシリーズを見ていると、旅への郷愁をかきたてられる。今回は、田中絹代扮する老婆のいる田舎の農家で、軒先をかりて弁当を食べている寅さんの姿などがそうだ。旅から旅へ歩く、見知らぬ土地へのおもい、そういう郷愁が寅さんシリーズを魅力的にしている。さらにこの「旅」は、土地から土地への旅であるだけでなく、人生の、人のこころへの旅でもあるのだ。だから、柴又に根をはったような「とらや」も、旅先であり、観客の郷愁をかきたててやまない。少なくてもぼくにとっては。

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