かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

真梨幸子「孤虫症」を読了

孤虫症
多数の男性と、奔放なセックスに耽溺する主婦の日記から始まる。セックスによる感染を予測させる恐ろしい寄生虫の話も、先が読めず面白い。性描写もあけすけな迫真力がある。
どうなるのだろうと読んでいくと、視点が、その主婦の妹に移動していく。それでもしばらくは、先の読めない展開に惹かれる。ところが、その妹の頭痛がひどくなり、文中の日記が錯乱したままの妹の精神状態を綴り始めると、しらけてくるものがある。錯乱後の日記が長すぎるのではないか。昔黒澤明「乱」を見て、後半狂った王の描写が延々続くので退屈したことを連想した。
後半、話の展開もミステリーの常道に納まっていく。そして、さらに視点が、犯人である別のひとたちへ移っていくころには、この作品の出だしに惹かれた興味は、半分くらい削がれてしまった。作品をこれほどいじりすぎるのは、どんなものかな、と思う。