かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

「ベルリン、僕らの革命」

60年代後半に若者たちが夢見た革命精神はどこへいったのだろう、て思うことがあります。資本家や金持ちを憎み、われわれは体制の歯車にはならない、と考えたりした‥‥そんな精神はいつのまにか胡散霧消してしまったようで、いまの団塊の世代のどこを見ても、そんな面影ありませんですよね。

ベルリン、僕らの革命」に登場する21世紀の革命家3人は、そんな60年代の思想的後継者のようにもみえます。しかし、違うのは60年代にあった若者たちを支持する改革への時代的熱気が、現代にはないのですね。ですから彼ら3人は社会から孤立しています。どこにも革命が発展する兆しが見えません。

3人の革命家たちは、金持ちの家へ侵入しますが、家具を荒らすだけで、盗みは働かず、贅沢な暮らしを改めよ、と警告を発するだけ。

こんな警告がどれだけ有効か、ってぼくは映画を見ながらおもってしまいましたが。

映画のストーリーは、彼らが家宅侵入を目撃され、目撃者を誘拐して逃走するところから、急展開していきます。

彼らが成り行きで誘拐してしまったブルジョワ男は、自分は1968年には革命の闘士であったと語ります。その闘士がなぜブルジョワの1員になってしまったのか、と尋ねる。彼は、夢を持っていたが、いつか家族をもつと、住み心地のいい家や豊かに暮らせる財力が欲しくなるものだ、と3人の若者たちに話す。そのへんは興味のあるところですが、ありきたりな説明以上のものではありませんでした。どこをどうしたら、急に革命家がそんな大金持ちになるのか、教えてほしいくらいです(笑)

映画は慎ましいユーモアがあります。それが本流なのか「革命」を鋭く切りこんではいません。時代に警鐘を鳴らす、という作品ではないんですね。要するに3人の革命家と元革命家だったブルジョワ男のほんわりしたやりとりを見せる映画なんです。

冒険者たち [DVD]
明日に向って撃て! ―特別編― [DVD]
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こんなアウトローの青年たちを描いた映画って、むかしはたくさんあったな、とおもいました。「俺たちに明日はない」や「明日に向かって撃て」のような壮絶なものから、アウトローの夢を描いた「冒険者たち」のような切ないものまで。こうした名作に比べると、この作品の印象は希薄です。

2004年に現れた3人の革命家は、本人たちがいくら真剣でも観客には茶番としか見えませんでした。笑って見ればそれでいい映画なんですけどね。何も希望の見えない彼らの革命に、ちょっとだけですが映画を見たあとは寂しい気がしました。