クリント・イーストウッド監督の「ミリオンダラ・ベイビー」を飯田橋の佳作座で見てきました。
映画の内容は、2つに分かれています。
前半のストーリーは、止血の達人でもあるトレーナー(クリント・イーストウッド)が、無名女性ボクサー(ヒラリー・スワンク)を、チャンピオン挑戦者にまで育てあげる話。
順調すぎるくらい、女性ボクサーは連戦連勝で、次々相手をノックアウトしていきます。
ところが、彼女は、チャンピオン戦を、ほぼ勝利しながら、一瞬の隙を見せた時、相手の反則パンチを受けて、リングに用意された椅子の上に倒れこんでしまいます‥‥。
映画後半は、ベットから動けなくなった女性ボクサーと、トレーナーの濃密な人間ドラマ。
簡単な紹介ですが、これ以上は、これから見るひとのネタバレになりますので‥‥(笑)。
こう筋を書いてみても、ちっとも面白そうな気がしません(笑)。頑固な敏腕マネージャーが、無名のボクサーをチャンピオンに育てあげる、なんてよくあるストーリーですよね。さらに、主人公の女性ボクサーが障害者となってからの後半は、センチメンタルなメロ・ドラマになりかねない要素がたっぷり。
でも、いいんですよ、これが(笑)。まず、3人の俳優がいい。クリント・イーストウッドの演出なのか、役者の演技は抑制されて、観客に安価な涙を要求するようには、つくられていません。
顔の表情の小さな変化だけで、感情を表現するクリント・イーストウッドは、やっぱりすばらしいと思いました。
さらに女性ボクサーを演じたヒラリー・スワンク。女性ボクサーというタフな役柄ですが、笑う表情が美しいですね。
そして、元チャンピオンの黒人ボクサーを演じたモーガン・フリーマン。彼が登場するだけで、ストーリーが厚みを増すような気がします。ただ役柄の解釈がカッコよくキマリすぎていて、類型的な印象がしなくもありません。こういうタイプの登場人物は、アメリカ映画では、過去におなじみすぎるのです。
とはいえ、「ミリオンダラ・ベイビー」は、見て損のない秀作でした。