かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

読むと癒される、童話のような小説〜瀬尾まいこ「幸福な食卓」

幸福な食卓
瀬尾まいこの小説のキーワードは、主人公(おおくは女性)が発する「へ?」と記される「コトバ」ではないか、とおもいます。これは、彼女の小説を読んだ方なら、「はいはい」ってなっとくしてくださるかもしれませんが、まだ読んでない方には、なんのことかわかりませんね(笑)。

恋人や周辺の人物が、主人公へおもいがけない会話(質問)をぶっつけてくる。そのときの主人公の会話として描かれるのが、「は?」でも「え?」でもなく、「へ?」なんです(笑)。この一見間のぬけた「へ?」が、気取らない、ちょっと周囲とは違和感をもった、ユニークな主人公の個性を的確に象徴しているとおもいます。

この「へ?」がたくさん登場する作品ほど、彼女の小説はおもしろいのではないか、っておもいますが、半分は冗談ですよ(笑)。

図書館の神様
瀬尾まいこの小説を読むのは、これで4冊めになります。最初に読んだ「図書館の神様」のふわぁとした優しい感覚がとても心地よくて、次々読んでみました。しかし、4冊めのこの小説になって、ふわぁとした感覚が、どこまでもふわぁとしたままのが、少しだけつまらなくなりました。

幸福な食卓」は、平和な家族に、いくつかの不幸が襲います。家族はそれぞれ傷つきますが、それを優しくささえあって、癒していきます。彼らは一風変わってはいても、けっして境界を踏み外すことはありません。「幸福な家族」の物語は、つまりは予定調和の物語なのですね。彼女は童話作家の出身ということですが、この物語も童話として読んだらいいのかもしれません。