かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

奈良の志賀直哉旧居のこと



写真は、奈良上高畑志賀直哉旧居


■仙道さんのコメントから

志賀直哉さんの旧居には当然行ったことがありますよ。
でも、我が家から直線距離で30kmもない距離ですから泊まった事はないです。
普通の家ですよね。
そこで志賀氏が長い間苦しんで「暗夜行路」を完成させたと思うから感動が湧いてくるのですね。

史跡には歴史的価値のほかに、こういった思い入れや誰々がここで何々をした、ここでこんな事件があった、その場所に今、自分が立っている、そのことが感動なのですね。

石碑などが立っていて、知らないことでも調べてみれば感動を覚えることもしばしば。

そういう、過去に思いを馳せることってとっても楽しいですね。


仙道さん、コメントありがとうございます。仙道さんがおっしゃるのは、全部その通りなのですが、奈良の志賀邸がおもしろいのは、加えて、志賀直哉の生活意識・美意識が、建物に反映されていることもあるんです。

文学論よりも、遊ぶことが好きだった志賀直哉は、広い板の間のリヴィングをつくり、そこには、テーブルや椅子だけでなく、マージャン台、卓球台などを置いて、ひっきりなしに彼を慕ってやってくる東京の来客と遊んだり、マージョンや将棋などをしていました。その部屋は、天井がサン・ルームで、太陽から光と熱を集めています。

そのくせ、遊んだあとの、手洗いは、外に手水(ちょうず)がちょろちょろながれている立派な大甕があって、それを使ったり……彼の文学そのままに、規制の住宅観念の意識にとらわれず、自分の好きなようにつくっています。

しかし、夫妻の部屋、子供部屋、茶室(これは当然ですけど)は日本間。子供部屋も、ある時期までは、カギをかけず、家族が自由に往来できるように作られていたようです。

ダイニングは、料理をつくりながら、カウンター越しに、出来たものを、来客に手渡せるように、大体、現代のマンションか、カウターの飲食店のようなつくりになっています。これなら、来客の多い志賀家ですから、接待する奥さんや娘さんたちは助かります。奥さんも談話に参加できますし、なにより、いちいちカウンターを出て、食べ物を運ぶ必要がない、という彼の合理性のあらわれです。

彼のことだから、書斎や茶室だって、かまわず寝転んで本を読んだり、茶室の作法なんて、気にもしていなかったでしょうけど(笑)。

現在、志賀直哉の「生活の思想」が反映された建造物を楽しめるのは、奈良のこの「旧居」だけかもしれません。

【注1】:これは、次の仙道さんのコメントへの御返事です。話の発端は、奈良の春日大社です。

【注2】:仙道さんのHPは、こちらです。

【注3】奈良の「志賀直哉旧居」の案内はこちらです。

仙道さん、コメントありがとうございました。