かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ビートルズ日本公演の当選ハガキ



これは、ringoさんの「【武道館公演の当選はがき】発見!」という記事へのコメント文(「ビートルズ探検隊」の投稿文とも同一の内容)です。


ビートルズ日本公演のチケットは、一般抽選はかなり厳しい当選率で、ぼくは13枚出して1枚だけ当たりました。ですから、当選のハガキはringoさんのとは違っています。

ringoさんのは、映画「ビートルズがやってくるヤア!ヤア!ヤア!」を上映した松竹セントラルの館主が、青少年が金銭トラブルなどにまきこまれないよう組織したという「B.F.C.(ビートルズ・ファン・クラブ)」の当選案内ですね。こちらのほうが、ずっと当選確率は高かったようです。

ビートルズ日本公演では「ファン・クラブに入れば公演のチケットがとれます」と宣伝しながら、実際は最初からチケットをとる何もあてのない、詐欺まがいのファン・クラブがあったようですが、このハガキは松竹セントラルの館主(たしか下山さんといったかな)が誠実にファンのために行動されていた証明でもありますね。実際、下山さんは、子供たちのために、チケットを1枚でもおおく確保するために奔走していたようですから。

このハガキを見ていると、多くのおとなたちがビートルズ・ファンを嫌悪し、蔑んでいたなかで、ごくごく少数であっても、おとなのなかにも、子供たちの夢をかなえてあげたいと思う誠実さが、あの時代に存在した、その証しでもあって、見ていると感傷的な気持ちになってしまいます。

ハガキからは、子供たちのために、チケットの確保がある程度できてよかった……そんな館主の安堵感も伝わってくるような気がしました。


ビートルズ日本公演の当選ハガキをアップされたringoさんからコメントをいただきましたので、もう少し追記させていただきます。

ビートルズの日本コンサートは、東京武道館で5回だけ。地方の10代のファンは、東京へ出てくることだけでも大変でした。学校では「ビートルズのコンサート禁止令!」を出すところもありました。テレビを見ると、あちこちの文化人が「あんな連中のコンサートに、娘をやるべきじゃない」といっています。娘をもった親は、ひるみますよね。一体何が起こるのか、自分でわからないから親は、不安な想像ばかりが膨らみます。ビートルズは、娘をとって食う鬼じゃないのに(笑)。

ringoさんだけではなくて、チケットをとりながら、見ることのできなかったファンはたくさんいたのではないか、っておもいます。

なのに、あの5回のコンサートには、物見高い、ビートルズとは普段無縁の連中が、苦労もせずチケットを入手して、たくさん来ていました。腹が立ちますが、それが事実です。

ringoさんのハガキには、ファンが待って待ってやっと適ったビートルズ・コンサートの実現……それをトラブルなく、子供たちに見せてあげたい、という下山さんの心意気、それが感じられます。
下山さんが、これをビジネスにしたとは考えられません。映画館へ足を運んでくれた子供たちが、無事ビートルズを見れるようにとの「親ごころ」だったでしょう。

しかし、せっかくビートルズがやってきたのに、子供たちにとって、コンサートを見ることは簡単ではなかったんですね。親と喧嘩して東京までやってきたのに、捜索願いを出されて、ついに見れなかった子。チケットの抽選があたらず、でも東京へ行けばビートルズと会えるとおもって家出して、ビートルズには会えず補導された子。いろいろありました。とにかく、日本の社会情勢はビートルズ・ファンに冷たかったです。見たくても見れなかったたくさんのファンのことを考えると、今でも悲しい気持ちになります。このハガキには、1966年という時代の、ビートルズ・ファンのいろいろな想いがつまっていますね。