やっと見ました。山中貞雄です。古い時代劇でありながら、しっかりとつくられた作品でした。といっても、これ1作を見て、山中貞雄の非凡さを見抜こうとしても、ちょっとムリかな。
「人情紙風船」(1937年)のような厳しいニヒリズムが出ているわけではなく、「丹下左膳余話 百万両の壺」(1935年)の豪快さもなく、もっとも一般的な時代劇かもしれませんが、それでも、どことなく映画の気品のようなものを感じました。
それから、当時16歳の可憐な可憐な原節子を見ることができます。現在見ることのできる原節子のもっとも古い映像だということです。
なんと、このDVDがレンタル屋さんにあって、おもいがけず見ることができました。これで、念願だった山中貞雄の、現存する3本の映画をすべて見ることができました。これで全部というのがちょっとさびしいですが。
3本見たなかでは、「人情紙風船」がやっぱり素晴らしい! もっともっとたくさんのひとに見てほしい映画です。ぼくも、もう一度見たいのですが、なかなかそのチャンスがありません。
しかし、戦争へ向う山中貞雄は死を予感してか、「おれの代表作が『人情紙風船』では、ちょっとさびしいな」ともらしたとか。山中貞雄が戦病死したのは1938年、28歳でした。本当に惜しい才能ですね。