●2005年公開
●主演:アル・パチーノ
シェイクスピアの人気戯曲『ヴェニスの商人』を、「イル・ポスティーノ」のマイケル・ラドフォード監督がアル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジョセフ・ファインズという実力派キャストを揃え映画化。名優アル・パチーノが現代的解釈を加え、新たなシャイロック像を披露。16世紀のヴェニス。貿易商のアントーニオは、親友のバッサーニオが美しい女相続人ポーシャと結婚するのに必要な資金を借りるための保証人を買って出る。ところが、ユダヤ人の高利貸シャイロックは、期限以内に返済できない場合は、代わりにアントーニオの肉1ポンドをもらう、という条件を突きつけるのだった…。
<「allcinema online」より>
現代的解釈というのは、原作では悪役といっていいユダヤ人商人、シャイロックの哀しみに焦点をあてたこと。ユダヤ人として、いわれなき差別と軽蔑を受けるシャイロックは、彼を蔑む貿易商アントーニオに復讐を試みます。もしお金を返せないなら、おまえの「1ポンドの肉がほしい」という契約を結びます。軽蔑の報酬としての恐怖をシャイロックはアントーニオに迫りますが、彼の友人バッサーニオの恋人、ポーシャの機智により、失敗に終わります。
シャイロックの哀しみと屈辱を、じっくりとアル・パチーノが演じていますが、筋立ては原作が喜劇なので、いかにも安普請で、原作を読んでなくても、先が読めてしまうのでは? 復讐の方法も、喜劇だから許される、安価な頓知問答に終始します。
シェイクスピアの映画化を、それほどたくさん見ているわけではないのですが、好きなのは黒澤明が「マクベス」を、日本の戦国時代に翻案して描いた「蜘蛛巣城」です。原作の骨格だけを借り、映画になりにくい長広舌を削り、動きや背景に能の様式をとりいれて、みごと美しい黒澤時代劇に再生しております。
3月29日ギンレイ・ホールにて