かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

今日は映画の日

久しぶりに映画の日が休日とぶつかったので、飯田橋のギンレイ・ホールと池袋のメトロポリタンの8階にあるシネ・リーブル池袋をハシゴしてきました。

1149160507*[日本映画]森田芳光監督「間宮兄弟


「ぴあ」の解説だけでは、ほのぼのした映画というくらいしかよくわかりませんでしたが、見たらとってもおもしろかったです。「の・ようなもの」や「家族ゲーム」のような新鮮でおもしろい作品をつくった森田芳光監督ですから、こういうコミカルな作品が得意でもふしぎではないのですが。それしても……。

森田芳光監督は、ほのぼのとか、あったか映画でも、1つ1つのつくりが、月並みでないのです。才能といってしまえば簡単なんですが。

特別風采はあがらないけど、とっても仲のよい兄弟のお話です。なんかわからないけど、二人は話が尽きなくて、一緒に話したり、DVDを見たり、商店街を散歩したり、友達以上の仲のよさです。しかし、そんなお話おもしろいかなあ、と思うんですけど、これが森田芳光監督の手にかかるとおもしろいんですね。

それから、このアパートを訪れる一風変わった女性たち、常盤貴子沢尻エリカ北川景子、みんなおもしろく書き込まれていて、へんに悩ましく(笑)、魅力的です。

なかでも、沢尻エリカは、映画「パッチギ」では、清純で悲劇的な北朝鮮の女性を演じていましたが、今回は時々お泊りにくる恋人のいる現代的な女性役。これが、とってもいいです。

1149160508*[外国映画]ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督「ある子供」

ある子供 [DVD]

2005年 /フランス、ベルギー


実際は、朝9時30分からこちらを先に見て、13時10分から池袋で「間宮兄弟」を見ました。こちらも傑作映画ですが、映画の味わいは辛口です。

ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督というと、「息子のまなざし」という作品を記憶されている方もいらっしゃるのではないか、とおもいます。

犯罪を犯した少年を社会復帰させるための職業訓練所で、教官として働く主人公が、自分の息子を殺した犯人の少年をあずかり、社会更正のための指導をする、というかなり衝撃的な設定ですけど、この作品は、静かに二人の姿を追うだけで、表立ったドラマは起こらないまま映画はエンディングに向う、そんな作品でした。

「ある子供」は、「息子のまなざし」よりも、小さなドラマがいくつもあって、作品としてはなじみやすいのではないでしょうか。

20歳になっても、定職はなく、盗みを重ね、それを売りながら、毎日を過している青年が主人公です。青年には、かわいい恋人がいて、彼の子を宿しますが、彼は、自分の子すら、金のために売ってしまいます。恋人にも愛想をつかされ、金も住む家もなく、追い詰められていく青年の姿を、監督は感情を昂ぶらせることなく、描いています。

ジェレミー・レニエという俳優が、等身大の青年をそのままに演じていて、とってもいいです。彼は、自分の子でもお金にかえてしまう青年ですが、それで悪ぶるわけでもなく、もっと深刻で、そのことを悪と認識する倫理観が欠落しているのです。ですから、恋人が自分の子供が売られてしまったと知って、ショックで失神してしまうと、うろたえ、彼は「悪かった。また子供をつくろうよ」とあやまります。絶望的なのですが、彼に悪意はないのです。

救いの見えないテーマですが、暗くじめじめした印象はありません。もっと、透明な感覚で、監督はそのことを解釈することなく、ただ青年の姿をリアルに映像化しています。