かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

中野孝次「ガン日記」

文藝春秋 2006年 07月号 [雑誌]
現在発売されている雑誌「文藝春秋」に、新たに発見された中野孝次の日記が掲載されている。

日記は、背中に痛みを感じ、病院で診察を受けるところからはじまる。診察の結果は「食道ガン」。恐れていたことが現実になった。

「どのくらい生きられますか」と聞くと、「あと1年くらいですね」と医者の宣告。中野孝次氏の日記は、宣告を受けてから、亡くなる4ヶ月前までの日々を、時々襲う不安も含めて、冷静に書きとどめている。中野孝次氏が冷静であればあるほど、運命は逃れがたく、非情である。

急速な体力の消耗に、もはや逃れがたい死を自覚し、残していかなければならない妻と、二匹の愛犬の今後を心配する。そして、自分は長いあいだ文学を通して、先人たちの死を見、彼らの思いに共感してきた、それが今、救いになると書く。

これまで読んだ著書から、中野孝次氏の生きることや、文学への真摯な姿勢を見てきたつもりだが、死を前にして「長いあいだ、文学を読んできてよかった」と率直に綴ることに、感動する。


【注】:現在手元に「文藝春秋」がないので、正確に引用できませんでした。断片的な感想のみ記録します。