かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

樋口真嗣監督『日本沈没』

日本沈没 スタンダード・エディション [ 草ナギ剛 ]
1970年代のはじめに、ぼくは小さな本屋さんにつとめていました。その本屋さんに平積みされた小松左京作『日本沈没上下』(カッパ・ブックス版)は、補充しても補充しても、1日で飛ぶように売れていきました。自分でも、さっそく読んでみました。時代の空気もあって、おもしろかったような気がします。細かなところは忘れていますが。

あとで映画化された森谷司郎監督の『日本沈没』も見にいきました。特撮がたのしく、鎌倉の大仏が沈んでいく様子などをちょっと覚えています。しかし、ほかの記憶はありません。ともかく『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』が大ヒットしていた時代のお話でございます。

今回はそのリメイク版ということで、やはりこの手のものは登場人物がどう描かれているかなどということより、一にも二にもお目当ては特撮であり、わたしたちの日本が、どのように沈没してしまうのか、それを想像すると、胸がわくわくしてきます(不謹慎といえば不謹慎ですが、まあそういわないで。これは映画です)。実際京都や奈良が壊れていく予告編を見ていると、ドキドキするような興奮を感じました。

で、今日見てきました。感想は、ロード・ショーのさなかなので、厳しい批評は控えますが、予想を遥かに下回りました(笑)。期待の日本沈没シーンは、映画のメインではなく、驚いたことに、登場する人物たちの恋愛、家族愛などが長々と描かれているのです。それも、使い古されたパターンそのままに。これからご覧になる方は、「日本沈没シーン」に過度な期待を寄せない方がよいとおもいます。

先に、名作『ポセイドン・アドベンチャー』のリメイク版『ポセイドン』は、パニック映画のおきまりである人間関係を淡白に描いて、映画の醍醐味を特撮にしぼっておもしろくしていた、と感想を書きましたが、リメイク版『日本沈没』は、これでもかこれでもかという執拗さで、恋愛・人間愛の感動を押しつけてきます。

(ワーナーマイカル大井にて)