かぶとむし日記

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ジム・ジャームッシュ監督『ブロークン・フラワーズ』

ブロークンフラワーズ [DVD]


まずは「allcinema online」の解説を先に見てください。

鬼才ジム・ジャームッシュ監督がビル・マーレイを主演に迎えて贈る哀愁漂うオフビート・コメディ。かつてのプレイボーイが、自分の息子がいるという差出人不明の手紙を手に、昔の恋人たちを訪ねる旅に出る。主人公の元恋人役でシャロン・ストーンジェシカ・ラングら豪華女優陣が登場。カンヌ映画祭審査員特別大賞(グランプリ)受賞作。


かつては多くの女性と恋愛を楽しんだ元プレイボーイのドン・ジョンストンは、中年となった現在も勝手気ままな独身生活を送る日々。そんなドンに恋人のシェリーも愛想を尽かして出ていった。そこへ、差出人不明のピンクの手紙が届く。便せんには“あなたと別れて20年、あなたの息子はもうすぐ19歳になります”と書かれていた。それを聞いた親友のウィンストンは、お節介にもドンが当時付き合っていた女性たちを訪ねて回る旅を段取りしてしまう。そして、気乗りのしないドンを強引に息子探しの旅へと送り出すのだった。


ジム・ジャームッシュ監督の作品をそれほど見ているわけではないんですけど、どれも不思議な印象をもっています。あまりストレートに楽しい映画はない……かな?(笑)


このなかで、『イヤー・ザ・ボース』は、問題なくかっこいいですよね。ロック好きな方はご存知でしょうけど、ニール・ヤングのファンであるジム・ジャームッシュ監督が、ニール・ヤング&クレイジー・ホースに突撃インタビューし、彼らのまさにゴリゴリに尖がった「ロック」を映像化したものですから。これは問答無用おもしろい映画です。ロックが好きならばですが(笑)。


ブロークン・フラワーズ』は、ジム・ジャームッシュ監督らしいふしぎな感覚を残しながらも、それほど楽しむのにむずかしくないロード・ムービーだと思いました。

登場する人物は、ちょっとずつどこか変で、思わずクスクス笑ってしまいます。ジャローン・ストーンの娘役の女性なんか、来客の前にいきなり全裸で電話しながら現れて、まるでくったくがない。彼女は、電話の相手としゃべるのに夢中なのです。

ビル・マーレイという役者は、映画のあいだ同一の表情しかしません。始終口を結んで、笑うこともなくて、目だけがキョロキョロするだけ。それで主人公の気持ちの動きを豊かに表現していますし、ジャームッシュの意図しているおかしなおかしなシリアス映画をみごとに演じ切っていると思いました。彼のやる喜劇よりも、こちらの方がおもしろいのでは。

結局ピンクの封筒で、「むかし別れたあとで、あなたの子どもを産みました。その子はいま19歳になります。旅の途中であなたに会いにいくかもしれません」と、ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)に手紙を送ったのは誰なのか、最後までぼくにはわかりませんでした。