かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新藤兼人監督『悪党』(1965年)

悪党 [DVD]
■あらすじ

時は14世紀、動乱の南北朝時代足利尊氏の執事として、天下に権勢をふるっていた高師直(こうのもろなお)と、塩谷判官(えんやはんがん)の妻、顔世(かおよ)の物語。

下品な権力者、高師直(こうのもろなお)は、塩谷判官の妻に懸想し、『徒然草』の作者である吉田兼好に恋文を依頼しますが、顔世(かおよ)は、それを拒否します。顔世への欲望をあきらめきれない師直は、夫の塩谷判官を出雲へ帰し、留守中に顔世への想いを遂げようとします。

高師直の企みを読んだ、塩谷判官と顔世は、ともに手をとり出雲に向かいますが、師直の追っ手に囲まれてしまいます。二人はあの世で再び添うことを約束し、塩谷判官は追っ手の中に切り込んで憤死、顔世は部下の手を借りて自決します。

高師直の前に、顔世の首が運ばれますが、その首はどこか不敵に師直を笑っているようでもありました。


以上のような話で、原作は谷崎潤一郎の戯曲『顔世』だそうです。スジを進行させるのは、侍従役の乙羽信子。あの名作『鬼婆』の、目の縁を黒ずませた邪悪な化粧を思い出させますが、『鬼婆』ほどには、テーマの抽象化が徹底されていないような気がしました。小沢栄太郎の演技が、くどい。