かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成瀬巳喜男監督『乙女ごころ三人姉妹』(1935年)


いにしえの浅草を舞台にした人情話。この映画が制作されたときは「現代」だったわけですが、いまとなっては、白黒の古めかしい映像以上に、えがかれている社会に「隔世の感」をおぼえます。

「おかあさん」に雇われた女性たちが、三味線をもって酒場をながしながら「1曲歌わせてください」と、客にねだります。

そうやって稼いだ売上金を「おかあさん」のところへもってかえってくる。「こんなもんしか稼げないのかい。しっかりおしよ」*1と「おかあさん」は、毒づく。

鞍馬天狗の「角兵衛獅子」を連想してしまいます。三味線のながしの世界。その後のどこにでもありそうな日常をとらえた成瀬映画とはべつもののようにおもえてしまいます。

三人姉妹の人情話は、芝居でも見ているようですが、映像の背景には、にぎやかな戦前の浅草が映ります。古い映画を見るときのたのしみの1つですが、背景の1シーン1シーンに目を惹かれました。


【追記】:あとからringoさんのブログで『乙女ごころ三人姉妹』の感想を読みました。映画の内容については、もっと詳しく書かれていますので参照してください。

*1:「こんなもんしか稼げないのかい。しっかりおしよ」=映画の正確な引用ではありません。