かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

堀切・深川を歩く(4月10日)


東武練馬のアパート「極貧荘」を出発する。池袋から日暮里へ出て、京成電車に乗り、「京成関屋」で降りる。

映画『東京物語』の舞台「堀切駅」へ

京成関屋駅は、小さな駅だが、立ち食いそばがあったので、朝食。食べてから、東武伊勢崎線の「堀切駅」を教えてもらう。地図でみると、それほど遠くないはずだった。

細い道を大体の見当で歩いていくと、荒川放水路の土手へ出る。

堀切駅は、小津安二郎監督『東京物語』で、山村聡の平山医院があるところだ。そのことを、川本三郎の『銀幕の東京』を読んで知った。堀切駅の周辺はさびしい。木造の駅舎は『銀幕の東京』によれば、大正13年に建てられたまま、だという。



【写真】:堀切駅西口



【写真】:荒川の土手から見た堀切駅東口


『銀幕の東京』から文章を引用する。

  • 堀切駅は「東京物語」の当時もいまも変わっていない(略)
  • 足立区のこのあたり(足立区千住曙町)は「下町」というよりも「場末」「東京のはずれ」と呼んだほうがいいかもしれない。
  • 尾道から出て来てやっと息子の山村聡の家にたどり着いた笠智衆東山千栄子が二人きりになったとき、「東京のどの辺でしょうか」「端のほうよ」「そうでしょうなあ、だいぶん自動車で遠いかったですけんのう」「う〜む」「もっとにぎやかなとこかと思うとった」「幸一ももっとにぎやかなとけえ出たいいうとったけど」と会話をかわすのが興味深い。

駅の近くに一軒だけ「みゆき」という食堂があったが、休みだった。



【写真】:駅の近くにある唯一の食堂


映画『東京物語』では、山村聡のところへ急患がはいり、両親を連れて東京見物の予定が突然中止になる。

それを両親よりも、山村聡の子どもたちが怒り出す。

東山千栄子は、孫の勇(いさむ)を荒川放水路へ連れていく。

土手で遊ぶ小さな孫を見ながら、東山千栄子が、「勇(いさむ)ちゃん大きくなったらなにんなるん? あんたもお父さんみたいにお医者さんか? あんたがのう、お医者さんになるころあ、お祖母ちゃんおるかのう」という。心に染みるようなセリフが忘れられないが、そのシーンが荒川の土手だ。

映画で見えるのは堀切橋だろうか。



【写真】:荒川放水路と堀切橋


その堀切橋をわたってみる。

クルマと自転車は通るが、歩いているひとはほとんどいない。しかし、車道と、自転車や歩行者の通るところがわかれているので、歩きにくくはない。

季節はずれの「堀切菖蒲園」に向かう。

大きな荒川に分断されているので、「堀切菖蒲園」は遠かった。荒川を渡り、また対岸を川にそって歩く。歩いているひとはなくて、閑散としている。

何も咲いていない堀切菖蒲園を見てから、京成電車の「堀切菖蒲園駅」へ向かう。

門前仲町から清澄へ

京成電車で、浅草を過ぎ、日本橋で乗換え、東西線門前仲町駅」で降りる。



【写真】:門前仲町駅から深川不動堂への通り


富岡八幡宮深川不動堂を見る。

ここから清澄通りを両国方面へ向かって北上。芭蕉の足跡がおおいが、芭蕉のことをなにもしらない(笑)。

清澄通り渡辺橋近くに、杖を手にして座る芭蕉像がある。



【写真】:等身大の芭蕉


芭蕉像から仙台中川に沿って歩くと、細い道に、芭蕉の句を記した木の札が並んで立っていた。



【写真】:芭蕉の句を見ながら川沿いに散歩


清澄庭園の近くに深川図書館があるので、休憩がてら寄る。

シンシア・レノンの書いた新刊『ジョン・レノンに恋して』が棚にあったので、ジュリアン・レノンの序文と、シンシア自身のまえがきを読む。

図書館を出てから、清澄庭園を一周する。




【写真】:清澄庭園


深川江戸資料館の近くの食堂で、豚の生姜焼き定食とビールでひと休み。

深川江戸資料館は、江戸の長屋が実物大で再現されていて、おもしろかった。屋根で、つくりものの猫が時々鳴いている。





【写真】:深川江戸資料館


芭蕉庵の跡がなぜか稲荷神社になっている「芭蕉庵跡」、隅田川を展望できる「深川芭蕉庵史跡展望園」、「江東区芭蕉記念館」を見て歩いたが、もともと芭蕉について基本的な知識がないので、おもしろさがわからない。



【写真】:芭蕉庵あとが稲荷神社になっている(笑)



【写真】:深川芭蕉庵史跡展望園



【写真】:展望園から見る隅田川


予定していたコースを歩いたので、近くにある、刺身のおいしい「魚三」で一杯やろうかな、とおもったがまだ15時だった。「魚三」の開店16時まで1時間ある。喉がかわいて、待てない。

結局その1時間が待ちきれず、森下町から大江戸線に乗って、「上野御徒町駅」で下り、足はもうしっかり「たきおか」にむかっている(笑)。


【追記】映画『東京物語』で、堀切駅荒川放水路を確認しようとおもったが、堀切駅は映画に映っていない(駅舎は映っていないが、ホームは映る)。それの確認のためちょっと見たつもりなのに、映画があまりにもすばらしいので、結局また最後まで見てしまった(笑)。1シーン1シーン、ため息が出るほど完璧な作品!