東武練馬のアパート「極貧荘」を出発する。池袋から日暮里へ出て、京成電車に乗り、「京成関屋」で降りる。
映画『東京物語』の舞台「堀切駅」へ
京成関屋駅は、小さな駅だが、立ち食いそばがあったので、朝食。食べてから、東武伊勢崎線の「堀切駅」を教えてもらう。地図でみると、それほど遠くないはずだった。
細い道を大体の見当で歩いていくと、荒川放水路の土手へ出る。
堀切駅は、小津安二郎監督『東京物語』で、山村聡の平山医院があるところだ。そのことを、川本三郎の『銀幕の東京』を読んで知った。堀切駅の周辺はさびしい。木造の駅舎は『銀幕の東京』によれば、大正13年に建てられたまま、だという。
【写真】:堀切駅西口
【写真】:荒川の土手から見た堀切駅東口
『銀幕の東京』から文章を引用する。
駅の近くに一軒だけ「みゆき」という食堂があったが、休みだった。
映画『東京物語』では、山村聡のところへ急患がはいり、両親を連れて東京見物の予定が突然中止になる。
それを両親よりも、山村聡の子どもたちが怒り出す。
土手で遊ぶ小さな孫を見ながら、東山千栄子が、「勇(いさむ)ちゃん大きくなったらなにんなるん? あんたもお父さんみたいにお医者さんか? あんたがのう、お医者さんになるころあ、お祖母ちゃんおるかのう」という。心に染みるようなセリフが忘れられないが、そのシーンが荒川の土手だ。
映画で見えるのは堀切橋だろうか。
【写真】:荒川放水路と堀切橋
その堀切橋をわたってみる。
クルマと自転車は通るが、歩いているひとはほとんどいない。しかし、車道と、自転車や歩行者の通るところがわかれているので、歩きにくくはない。
季節はずれの「堀切菖蒲園」に向かう。
大きな荒川に分断されているので、「堀切菖蒲園」は遠かった。荒川を渡り、また対岸を川にそって歩く。歩いているひとはなくて、閑散としている。
門前仲町から清澄へ
京成電車で、浅草を過ぎ、日本橋で乗換え、東西線「門前仲町駅」で降りる。
ここから清澄通りを両国方面へ向かって北上。芭蕉の足跡がおおいが、芭蕉のことをなにもしらない(笑)。
【写真】:等身大の芭蕉像
芭蕉像から仙台中川に沿って歩くと、細い道に、芭蕉の句を記した木の札が並んで立っていた。
【写真】:芭蕉の句を見ながら川沿いに散歩
シンシア・レノンの書いた新刊『ジョン・レノンに恋して』が棚にあったので、ジュリアン・レノンの序文と、シンシア自身のまえがきを読む。
図書館を出てから、清澄庭園を一周する。
【写真】:清澄庭園
深川江戸資料館の近くの食堂で、豚の生姜焼き定食とビールでひと休み。
深川江戸資料館は、江戸の長屋が実物大で再現されていて、おもしろかった。屋根で、つくりものの猫が時々鳴いている。
芭蕉庵の跡がなぜか稲荷神社になっている「芭蕉庵跡」、隅田川を展望できる「深川芭蕉庵史跡展望園」、「江東区芭蕉記念館」を見て歩いたが、もともと芭蕉について基本的な知識がないので、おもしろさがわからない。
【写真】:芭蕉庵あとが稲荷神社になっている(笑)
【写真】:深川芭蕉庵史跡展望園
【写真】:展望園から見る隅田川
予定していたコースを歩いたので、近くにある、刺身のおいしい「魚三」で一杯やろうかな、とおもったがまだ15時だった。「魚三」の開店16時まで1時間ある。喉がかわいて、待てない。
結局その1時間が待ちきれず、森下町から大江戸線に乗って、「上野御徒町駅」で下り、足はもうしっかり「たきおか」にむかっている(笑)。
【追記】映画『東京物語』で、堀切駅と荒川放水路を確認しようとおもったが、堀切駅は映画に映っていない(駅舎は映っていないが、ホームは映る)。それの確認のためちょっと見たつもりなのに、映画があまりにもすばらしいので、結局また最後まで見てしまった(笑)。1シーン1シーン、ため息が出るほど完璧な作品!