かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新文芸座の市川雷蔵特集を見る(5月17日)

小学生のころは、時代劇が大好き。映画といえばチャンバラでした。好きだったのは中村錦之助大川橋蔵、大友柳太郎などで、雷蔵映画も見るには見ましたが、東映時代劇ほど頻繁ではありませんでした。雷蔵のニヒルな魅力を、小学生が理解するのはむずかしかったのかもしれません。

今回池袋の「新文芸座」で見た2本は、眠狂四郎のようなニヒル雷蔵ではなく、はなやかなコメディ時代劇でした。

濡れ髪三度笠(1959年、カラー)

家来の謀反にあった若君(本郷功次郎)を、一匹狼のヤクザ(市川雷蔵)が守って、しかるべき地位につける、というような話。

再三にわたって命を救ってくれたヤクザの雷蔵本郷功次郎の若君は信服。義兄弟のさかずきをかわします。権力など恐れもしない一匹狼のヤクザ市川雷蔵がすごくかっこいいぞ、といいたいけど、型どおりの任侠男であります。

おもしろかったのはラスト・シーン。無事お城についた若君だが、主君の地位より魅力なのは兄貴との友情、ってなわけで……

若君は、城主の地位を投げ捨てて、ヤクザ雷蔵を追う。

川を舟で渡り、去っていく雷蔵。「兄貴ィ〜、待ってくれ」と、土手から手を振りながら追う、若き本郷功次郎。これはどこかで見たような……はい、そうです(笑)。「男はつらいよ」の1シーンを見ているような気分になりました。


濡れ髪剣法(1958年、白黒)

家来のお追従で得意になっていた世間知らずの若様(市川雷蔵)が、婚約者のお姫様(八千草薫)に、ズバリそれを指摘され、見聞のためにお城をぬけだす。城の世界しか知らない若様と、庶民とのズレが笑いをよぶコメディ映画。

たわいのない話ですけど、映画はまさに黄金時代。豪華につくられた江戸の町のセットを見ているのが、ドラマ以上にたのしい。この作品の雷蔵はひたすら明るく、くったくがない。

おどろいたのは、八千草薫のお姫様。とても可憐で気品がありました。笑う表情がとてもかわいい。