「巨匠が遺した絵コンテシナリオ創作ノート」という副題がついています。
先日熊井啓監督で映画を見たばかり。シナリオを図書館で見つけたので、さっそく読んでみました。あの映画、どこまでが黒澤明で、どこからが熊井啓監督だったのか。
読んだ印象を結論からいいますと、熊井啓監督は黒澤明のシナリオを忠実に映像化していたようにおもいます。シナリオの1シーン1シーンから、映画の場面が思い浮かびました。
本には黒澤明の絵コンテが収録されています。『影武者』のころからでしょうか、映画造りの資金調達を待つあいだ、黒澤明は頭に浮かぶシーンを絵コンテに描きはじめました。本に掲載された絵コンテを見ていくと、黒澤明のなかでは、この映画『海を見ていた』は、細部まで映像が完成されていたようです。
最後に強い台風で海が氾濫し、深川の遊郭が水びたしになるシーン。黒澤明のシナリオはすごい迫力です。熊井啓監督の映画でも、もちろん描かれていました。でも、こういった天気の激変は、黒澤明の得意とするところです。強烈な雨と風、水に沈没する深川の遊郭……このへんは、黒澤明監督ならどのように映像化したのだろう、と想像が拡がります。