かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

川島雄三監督『花影(かえい)』(1961年)


長年銀座の女給をつとめ、多くの男性に愛されながら、しかし結果男に裏切られていく、どこかお人好しな、ひとりの女の生きる姿を描く。


以前tougyouさんが『花影』のことを話題にしていたときは、まるでこの映画のことを知りませんでした。それを、ringoさんからお借りして、やっと見ることができました。


いい映画でした。川島雄三監督を好きになりました。銀座のバーの女性なんて、ぼくは実際には知らないのですが、池内淳子演じる<葉子>という女性がとてもよく描けているとおもいました。


<お金のない男ばかり惚れてしまう>


そんな天使のような女性がいたら、ぼくは実にうれしいのですが(笑)、まあ、ぼくほど貧乏をしていなくても、この映画のなかで、葉子が好きになるのは、お金のない男や、運から見放された男で、そんな<おとなのお伽話>をとてもリアルに描ききったところにこの作品の心地よさがあるとおもいます。


佐野周二をはじめ、池部良有島一郎高島忠夫三橋達也……ひとりひとり葉子にかかわる男性が一面的な類型ではなく、よく描かれている、とおもいました。誰も、みな悪人ではありませんが、葉子を結果的に傷つけてしまう、こうした<無意識のエゴイズム>が、とても鮮明に描かれている作品だとおもいました。


池内淳子が美しいですね。銀座の女性を描いた傑作といえば、成瀬巳喜男作品がすぐ頭に浮かびますが、この『花影』も、それに負けない傑作の1本ではないでしょうか。