かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

島津保次郎監督『嫁ぐ日まで』(1940年)



原節子が20歳のときに出演した映画だといいます。


おとうさんが再婚。新しい母(沢村貞子)になじめない妹(矢口陽子)を案じる長女が、やがてその新しい母に、妹のことを託して、嫁ぐまでの日々を描いています。


こちらにringoさんの感想ありますけど、それにあまり追加することはありません。つまらないからではありません。むしろ、ぼくは好きな作品です。静かに見ているだけで、じんわりいい気持ちになれる映画、とでもいえばいいのでしょうか。


1940(昭和15)年の日本の町や家並み、市民の細かな日常がていねいに描かれているので、古い日本への郷愁をかきたてられます。


原節子は、20歳(映画のなかの設定はどうだったかな?)。しっかりと家のなかを切り盛りし、再婚で新たに家族になる母への妹の反撥にも、心をくだき、二人の和解と、一家の平安を願っています。


原節子が、着物の上に割烹着をはおって、家事をやっている姿も、いまの20歳の女性を想像すると、別世界のような気がしてしまいます。


きっと同じ日本の話でも、昭和15年と平成20年の<20歳>は、別ものなんでしょうね。


原節子に求愛するおさななじみのような青年がいますが、原節子は、「本人たちだけで結婚は決められないわ」というようなことをいって断り、最後はお見合いで結婚していきます。見ていると、ちょっとはがゆいくらいですが、戦前の日本というのは、そんなものだったのか?


最後の、嫁ぐ日の、原節子の圧倒的に美しい花嫁姿。そこに、すべてなっとくさせられてしまう作品でした。