かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新藤兼人監督『縮図』(1953年)


縮図 [DVD]


佃島(東京都中央区)に住む貧しい靴職人の長女・銀子(乙羽信子)が、家族のために、芸者となって、結局は薄情で、芸者を慰みものとしてしかおもわない男たちのあいだにあって、辛酸をなめる。


芸者をやめたい、とおもう銀子は、なんどか佃島の実家にもどるが、実家の貧しさは目を被うばかりで、妹を芸者にしないためには、銀子が芸者を続けていかなければならない。


そんな銀子の想いとは別に、お座敷に出る銀子は、次第にその立ち居振舞いが、こなれていくようにみえる……。


★★★


新藤兼人は、自身の姉(長女)が、家の破産と、父の経済的な無力もあって、お金のためにアメリカ人へ嫁がなければならなかった経験をもつ。そのことが、家族の犠牲となって芸者に身を売る銀子の苦しみを描く、製作の動機になっているかもしない、とおもいました。


芸者の銀子を演じる乙羽信子は、やはり佃島か月島あたりに実家のある、銀座のやとわれママを演じた高峰秀子成瀬巳喜男監督『女が階段を上がる時』)を連想させる。