かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

谷口千吉監督『銀嶺の果て』(1947年)


銀嶺の果て [DVD]


ringoさんがまとめて貸してくださったなかの1作で、意外ということはもちろんありませんけど、想像以上におもしろかったのがこの作品でした。


三人の強盗が、雪山の中に逃げ込む。山のなかに住む老人や娘、登山家を含めて、危険な争闘がはじまります。


本格的な山岳アクション、見ごたえがありました。実際に雪山のなかで、ほぼ全編にわたって撮影したとか。その効果は十分に出ています。


三人組の強盗を演じるのは、志村喬三船敏郎、小杉義男。それにからむ登山家が河野秋武です。河野秋武は、黒澤明監督『わが青春に悔なし』で、主人公藤田進が反戦活動に打ち込む、それとは対象的に、良心の声を封じ、出世街道を歩む、青年を演じていました。


黒沢組の常連となるひとたちが、そろって出演。というよりも、このとき三船敏郎は、はじめての映画出演でした。三船敏郎も、志村喬も、これから黒澤明の黄金時代を支えていく俳優になっていくわけですが、この映画は、そういう歴史的な意味をぬきにしても、秀作だとおもいました。


徹底的な悪役を演じる三船敏郎が生きいきとしています。この演技がかわれたのか、黒澤明監督の『酔いどれ天使』にそのままの<不良役>で登場しています。


監督谷口千吉、脚本黒澤明、主演志村喬三船敏郎


これは、見る価値ありますよ、この時代の日本映画で、こんなすごい山岳アクション映画を見られるなんて、おどろきでした。