日露戦争末期、兵力も物資も底を尽きかけた日本軍は、追い詰められていた。最後の決戦地として、ロシアが兵力を集めているのが、鉄嶺なのか奉天なのか。
兵力を2つに割くゆとりのない日本軍は、6人の斥候隊を、敵状視察に送り出す。
敵陣を横断して情報を探る、まさに6人の決死隊だった。ひとりでも生還して、決戦地の情報をもたらしてくれたら、日本軍は全兵力を1つの場所に結集して、最後の決戦に挑むことができる……。
ロシアに勝つ道は、それしかない。
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山中峯太郎の『敵中横断三百里』は、戦時中、愛国精神を発揚するとして、学校からも奨励された人気冒険小説。決死隊を描いて、ごく自然に、日本軍人の勇気が称えられている。
黒澤明作品に引き寄せると、6人の勇気ある決死隊は、『七人の侍』のようでもあるし、また、敵陣突破は『隠し砦の三悪人』を彷彿させる。
黒澤明は、これを戦時中に自分で撮るつもりだったが、実現しなかったとか。それが戦後、森一生監督で映画化された。
黒澤明が撮ったらどんな映画になったか、とおもいながら見ました。森一生作品としては、つまらなくはないが、別段おもしろくもない(笑)。