かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

島耕二監督『銀座カンカン娘』(1949年)


新東宝映画傑作選 銀座カンカン娘 [DVD]


ミュージカルというより、明るい歌謡映画でした。


ぼくは、強度のミュージカル・アレルギーで、その作品がミュージカルだというだけで、どんな名作でも、見る意欲を失ってしまいますが、これは楽しく見ることができました。



ピアノが買いたい笠置シヅ子と、絵の道具を揃えたい高峰秀子が、トランペット吹き、岸井明の誘いで、銀座を、歌って流すようになる。はじめ恥ずかしかったが、段々歌も踊りもなれてきて……。


トランペットが岸井、歌と踊りが高峰と笠置。


この3人が歌うのは、「銀座カンカン娘」。3人の歌と踊りは、銀座で大うけ。無事にお金も、もうかって、めでたしめでたし!





■「銀座カンカン娘」



あの娘可愛や カンカン娘
赤いブラウス サンダルはいて
誰を待つやら 銀座の街角
時計ながめて そわそわにやにや
これが銀座の カンカン娘


雨に降られて カンカン娘
傘もささずに 靴までぬいで
ままよ銀座は 私のジャングル
虎や狼 恐くはないのよ
これが銀座の カンカン娘


指をさされて カンカン娘
ちょいと啖呵も 切りたくなるわ
家がなくても お金がなくても
男なんかに だまされまいぞよ
これが銀座の カンカン娘


全編歌と踊りが中心。高峰秀子は、成瀬巳喜男映画などでは、暗い役をこなすのに、ここでは絶えず満面の笑み。腰をふって踊りながら、この歌を歌う。役者としての幅の広さに、改めて感心してしまう。


落語好きには、古今亭志ん生が出ているのがうれしい。「替り目」の一部を、映像で見、聴くことができる。



「替り目」は、こんな話。


亭主関白の男が、酔払って帰ってくる。家につまみがないので、妻におでんを買いにやらせる。


いつも、ああだ、こうだ、と妻を罵倒するが、妻が出かけてしまうと、「ああみえてもツラも悪くないし、おれにはもったいねえくれえ、いい女だ。おれは、本当は腹ん中で、あいつに手を合わせ拝んでるよ」と、ひとりしみじみ妻への感謝をつぶやく。


ところが出かけたとおもった妻は、まだ家のなかにいて、これを聞かれてしまう。


「おめえ、まだいたのか」と、男が叫んで終わる。



思いっきり明るい、高峰秀子の歌と踊りを楽しみ、そして、古今亭志ん生の、落語「替り目」を聴けるだけでも、ぼくには幸せな作品でした。