かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

本土寺の紅葉と我孫子(12月1日)


仕事明け、どこへ紅葉を見にいくか迷っていたら、Dさんが、
「昨日ばあさんを連れて本土寺へいきましたけど、きれいでしたよ」というので、
急遽、本土寺へいくことにする。


本土寺は、2年前にも、ringoさんとringoさんのお弟子さんたちのキルト展を、柏まで見にいったとき、立ち寄ったことがある。そのときは、感激するほどきれいだった。



東武線の堀切駅から北千住駅で乗換え、千代田線で、北小金駅へ。11時頃、着く。


駅から本土寺までの参道の木々は、まだ紅葉してなくて、山門付近でやっと紅葉が目にはいってくる。しかし、紅い色が、それほど鮮明でなく、少しくすんでいる。2年前は12月10日に訪れているので、見ごろの最盛期は、もう少しあとなのかもしれない。


500円の見物料を払って中へはいる。


前回ほどではなくても、さすがに境内を歩いていくと、紅色に包まれてきれいだった。本土寺の境内は、起伏があって、歩くのにもたのしい。









本土寺の紅葉



本土寺に1時間ほどいて、都心へもどって映画を見るかどうか迷ったが(今日は映画の日)、ここまで来たのなら、とおもい、我孫子へいく。


我孫子は、何度か来ているが、いつも懐かしい気分になる。駅の階段を下りると、まず駅前にある「我孫子市ゆかりの文化人」の案内板を見る。中央の大きな写真に、武者小路実篤柳宗悦志賀直哉が並んでいる。





○駅前の案内板




ここまで来て、今日が月曜日であることに気づいた。美術館や博物館、記念館はたいてい月曜日が休館になっている。おめあての1つ、「白樺文学館」も休みのはずだった。


残念だけど、志賀直哉旧居跡を見、手賀沼を眺めて帰ることにする。


駅からの広い道を下り、手賀沼にぶつかるところを、左の住宅街へはいっていくと、志賀直哉旧居跡がある。駅から15分〜20分くらいだろうか。


志賀直哉旧居跡の向かい側にある「白樺文学館」は、やっぱり閉まっていた。


旧居跡のベンチにすわり、しばらく静かな時間を過ごす。もちろん、誰もいない。木々に被われているので、ここは昼でも暗いことがおおいが、今日は天気がいいので、わりと明るかった。





○白樺文学館








志賀直哉旧居跡





志賀直哉は、大正4年我孫子に住みはじめ、大正12年、京都へ移り住むまで、ここで暮した。


柳宗悦(やなぎ・むねよし)、武者小路実篤バーナード・リーチ瀧井孝作などが、次々我孫子へ移り住んで、我孫子はちょっとした文化村になる。


志賀は我孫子の静かな生活を楽しみ、「城崎にて」や「雪の日」、中篇「和解」などを書いた。


「雪の日」は、我孫子での生活がそのまま描かれている。



2月の寒い日、朝起きると一面の雪だ。気分のはしゃいだ直哉は、買い物を引き受け、泊まっていたR君と、魚屋、米屋、炭屋、郵便局などで用足しをする。


柳宗悦の家へ寄る。柳は、「まもなくリーチが来るはずだ」などという。今度、リーチが、武者小路実篤の本の装丁をするので、その相談にくる……そんな話だったとおもう(すみません、今記憶だけで書いています、笑)。


帰り、手賀沼の雪景色に見惚れる。乗り捨てられた小さな舟に雪がかぶって、墨絵のようだ、とおもう。


直哉は、手賀沼の雪景色を眺めながら、出来のいい墨絵は、目に見える風景だけでなく、その風景のもつ気韻のようなものまで掴んでいる、と、優れた画家たちの、ものを見る眼の深さ、鋭さに思いを馳せる。


来客が帰り、直哉は書斎でしばらく書き物に集中する。疲れて、外を見ると、いつか雪はやんで、静かな月夜になっていた。灯りを向けてみると、窓の外の、梅の木の枝に、雪が積もって光っている。



手賀沼へ引き返す。天気がいいので、日向にいるとポカポカする。タオルを顔にかけて、ベンチに寝ころぶ。


沼に集まった鳥の声を聞いているうちに、少し眠った。




手賀沼