むかしデビッド・ボウイが大好き、という女性と知り合った。ぼくは、彼女に興味があったので、ボウイのことを聞いてみた・・・
「どんなところがいいの?」
「何よりも声ね。それから、ボウイ様のあの鋭い顔よね」
「・・・」
「キミキミ、ちゃんと聴きなさいよ。ボウイのラジカルな音楽を!」
1980年の春・・・。
そんなたわいのないことから、デビッド・ボウイを聴くようになった。
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ボウイの初期の代表曲「Space Oddity」で、宇宙飛行士トム大佐は、宇宙のなかを、孤独に漂う・・・
今
僕ハ ブリキ缶ノ上ニ座ッテイル
世界ノ遥カ彼方ダ
惑星
地球ハ青イ
僕ニデキルコトハ何モナイ
(北沢杏里訳『デビッド・ボウイ詩集』より「「Space Oddity」)
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この主人公、トム大佐は、もう一度ボウイの音楽のなかに現れる。しかし、トム大佐は宇宙のヒーローとしてではなく、麻薬中毒者として登場する・・・
いつもいつも私は自分に言ってきかせる
私は今夜 薬を飲まないだろう
しかし小さな緑の車輪が私の後についてきてしまう
おお まただ
私は大切な友だちと一緒になってしまった
幸せだ あなたがたもそうあることを望んでいる
一回の閃光 けれど煙の出るピストルではない
私は決してよいことをしたためしがなかった
私は決して悪いことはしなかった
私は思いつきでやったことはなかった
私は氷を割る斧が欲しい
すぐにも降りていきたいのだ
(北沢杏里訳『デビッド・ボウイ詩集』より「Aches to Ashes」)
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●宇宙飛行士トム大佐は、宇宙のなかで孤独を感じてしまう・・・
●「Aches to Ashes」に、トム大佐は、麻薬中毒者として再び登場する。