かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

吉田惠輔監督『純喫茶磯辺』(2008年)


純喫茶磯辺 [DVD]
tougyouさんがこちらのブログで、「麻生久美子のオタク喫茶のコスプレ衣装とそのみごとな脚にドキドキする。それだけで満足」と簡単に触れています。


ぼくも麻生久美子の足はよかったけど、映画にはもっと満足しました(笑)。



人生をテキトーに生きる危なかったしい父(宮迫博之)と、それをぶつぶついいながら優しく案じる堅実な高校生の娘(仲里依紗)の関係を、さっぱりとユーモラスに描いた秀作でした。


自分がこんなテキトーな父で、そしてこんな優しい娘がいたら、素敵ですね(笑)。


高校生を演じる仲里依紗がすごく自然で、セリフは生のままのように活き活きしていて、この作品の魅力になっています。この女優もうまいですね。


表情も、セリフの言い回しも、もう少し小さいころ、うちの娘が、日常しゃべっていたセリフと同じでした(笑)。


父を演じる宮迫博之も、この役のために存在している役者のように自然で、ぼくは好感をもちました。


それから、マドンナ役の麻生久美子もよかったです。彼女は、傷心のまま故郷の北海道へ帰ってしまったのかとおもうと、じつはまだ町にいて、違う男の子供をはらんでいる。


しかも、そんな物悲しい別れをしたヒロインにはおよそ似合わない、大きなお腹をして、巨大な甘菓子を口いっぱいにほおばっているシーンなど、<女>よりも<母>になろうとするひとりの女性の姿を描いて、おもしろくて、少し哀しい。


女子高校生の仲里依紗は、父の好きだった麻生久美子にひどい非難を浴びせ、そのことを悔いているので、再会したらお詫びのセリフをいわせるのが<常套手段>だろうとみていると、この監督はそれをいわせないまま、微妙な二人の関係を描ききってしまいました。


映画ストーリーの常識を少し壊してみせた、この監督の作戦かもしれません。そのほかにも、この映画、隠し味的にところどころスパイスが効いています。