かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

根岸吉太郎監督『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』(上映中)



原作は、太宰治の有名な短編小説。放蕩無頼の夫を、献身的に支える妻の姿が描かれる。もとが短いので、原作には登場しない人物も用意し、ストーリーも書き足して、1本の映画にしている。


太宰の好きな<奉仕の愛><無償の愛>がテーマだろうか。


ビートルズは「君が受けとる愛は、君が与える愛に等しい」*1と歌ったけれど、この映画では、与えるのは女性ばかりで、男性は、ただ受けとるだけ。そこに与え合う公平性はない。


浅野忠信は、さすがにすごい存在感で主人公の無頼作家を演じていたが、ぼくは、この主人公の生き方にまるで共感できない。だから映画を見る目も、どこか醒めてしまう。


その身勝手な生き方に、何か意味があるように、苦悩してみせるのも、いやらしい。もちろん、役者の問題ではなく、映画制作者、それ以上、原作者に起因がある。


太宰治は、ぼくの理解を超える。


8割方、居酒屋が舞台で、えんえんとお酒を飲むシーンが続くのがおもしろかった。

*1:Abbey Road』収録の「The End」より・・・(And in the end the love you take Is equal to the love you make)。