結論からいうと、ちょっとガッカリの<志賀直哉「痴情」レビュー>でした。
「小説の神様」で近寄りがたい存在かとおもっていたけど、志賀直哉が書いた、中年の浮気小説を読んだら、志賀直哉も普通の男だとわかった・・・なんて、中学生の、できの悪い読書感想文みたいだ(笑)。
言葉の調子はおだやかながら、物事の真髄をズバリと言い当てて、ハンパ者をメッタ斬るタイプの老人の面つきです。相手が顔面蒼白になって傷ついていても、そういう相手の感情には全くデリカシーも憐みもかけらも見せず、為にならん、と思っているのか知らないが、フォローの一言もないまま涼しい顔で腰ぎんちゃくにお酌をさせてるような老賢人。
随分想像力を駆使しているような文体だけれども、この志賀直哉のイメージは、西川美和のオリジナルではない。
なんてことない、あの太宰治が「如是我聞」でつくりあげた志賀直哉像をそのまま踏襲しているだけ。
それから、この浮ついた文体はどうも。ユーモアのつもりだろうけど、これがあの映画『ゆれる』の監督の文章なの・・・と、ふしぎにおもうほど、品がない。
「痴情」という短編の読み込みにも全然なっていないので、なぜこの小説を選択したのかも、よくわからない。
他の作家・作品についてのレビュ−を読む意欲が、失せてしまった。