tougyouさんのブログに刺激を受けて、この映画4度目を、また見てしまった。
小学校のころ、大友柳太郎の丹下左膳は何本か見ていて、それなりにファンだったけど、その後左膳のことはすっかり忘れていた。
それが、山中貞雄監督の左膳で、再び、片目片腕の男の物語を、見直すことになった。
山中版「左膳」は、<ニヒリスト丹下左膳>のイメージを裏切っておもしろい。
左膳(大河内伝次郎)とお藤(喜代三)の丁々発止のやりとりは、何回見ても笑ってしまう。大河内伝次郎が、意外といっては失礼だけど、うまいのだ。
この映画、シーンとシーンのつなぎがうまい。セリフの内容が、次の場面になると逆転しているおもしろさは、鮮やかで、うなってしまう。
脚色の三村伸太郎の功績も大きいのだろう。
津田豊滋監督、豊川悦司主演の『丹下左膳 百万両の壺』(2004年)は、この映画の完全リメイクだが、やっぱりおもしろかった。
徹底して虚無感が漂う『人情紙風船』(1937年)と、この粋で可笑しな『丹下左膳余話 百万両の壺』が、山中貞雄という同一の監督でつくられているのがすごい。
黒澤明の戦後の大活躍をおもうと、山中貞雄が戦後も生きていたなら、どんな卓抜した傑作映画を残したろうかと、想像しないではいられない。