かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

山中貞雄監督『丹下左膳余話 百万両の壺』(1935年)



tougyouさんのブログに刺激を受けて、この映画4度目を、また見てしまった。


小学校のころ、大友柳太郎の丹下左膳は何本か見ていて、それなりにファンだったけど、その後左膳のことはすっかり忘れていた。


それが、山中貞雄監督の左膳で、再び、片目片腕の男の物語を、見直すことになった。


山中版「左膳」は、<ニヒリスト丹下左膳>のイメージを裏切っておもしろい。


左膳(大河内伝次郎)とお藤(喜代三)の丁々発止のやりとりは、何回見ても笑ってしまう。大河内伝次郎が、意外といっては失礼だけど、うまいのだ。


この映画、シーンとシーンのつなぎがうまい。セリフの内容が、次の場面になると逆転しているおもしろさは、鮮やかで、うなってしまう。


脚色の三村伸太郎の功績も大きいのだろう。


田豊滋監督、豊川悦司主演の『丹下左膳 百万両の壺』(2004年)は、この映画の完全リメイクだが、やっぱりおもしろかった。


徹底して虚無感が漂う『人情紙風船』(1937年)と、この粋で可笑しな『丹下左膳余話 百万両の壺』が、山中貞雄という同一の監督でつくられているのがすごい。


山中貞雄は、黒澤明より1つ上の1909年生まれ。


黒澤明の戦後の大活躍をおもうと、山中貞雄が戦後も生きていたなら、どんな卓抜した傑作映画を残したろうかと、想像しないではいられない。