かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

市川崑監督『野火』(1959年)

野火 [DVD]
舞台は、比島戦線、レイテ島。


体が弱り、所属部隊からは追い出され、しかし、病院からは受け入れてもらえない田村一等兵船越英二 )は、どこへもいくところがなくて、山中をさまよう。


あてもなく歩く田村は、壊滅状態にあるほかの日本兵とあい、いっしょに行動をともにする。


が、彼らは、すでに、敵と戦う意欲など、失せている。指揮系統も機能していない。襲いかかる飢餓との戦いだけが深刻だった。


全編、魂を失い幽鬼のように歩く、船越英二の演技が印象に残る。


むかしは、こんな救いのないテーマの映画でも、観客は映画館に足を運んだのだなあ、とそんなことを考えてしまう。