かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ポール・マッカートニーのライブ、あれやこれや(手古名さんへ)

●手古名さん
ポールはソロでもいっぱい曲があるので候補に挙がっているのはほとんどソロの曲ですね。
私はもし来日したらビートルズ時代の曲ももっと演奏してほしいなあ。
今やThe Beatlesの曲を演奏できる(特に歌える)メンバーはポールしかいないんだもの。



これは1970年代からの経緯をざっと話さないとわかりにくいかもしれないですね。ポールだけでなく70年代は、ビートルズのメンバーが全員ビートルズを封印して、新しい出発をしようとしていた10年間でしたからね。ポールも一部のビートルズ・ナンバーは演奏しましたが、ウイングスはビートルズを演奏するために結成したのではないですから、当然ウイングスのアルバムから選んでライブをやっていました。


1980年代は、ジョンの死へのショックもあって、ポールはウイングスを解散し、ライブ活動そのものを停止しています。


それが、1989年からやっとポールはライブ活動を再開したんですね。90年にはソロで初来日しました。70年代に二度の来日中止があって、ぼくらファンは泣きましたからね、この来日をどれほど待ち望んでいたか、そのことをここで話していると、際限なく長くなりますけど(笑)。


ともかく、1980年の大麻逮捕事件があって以来、もうポールは二度と来日しないのでは、と絶望的な気持ちにもなっていました。


そんなこともあって、ぼくは、1990年、ポールが無事税関を通ったニュースを見たとき、「やったあ!やったあ!やったあ!」と絶叫して、小さかった子供たちをびっくりさせました(笑)。


ビートルズ解散から20年、ポールはやっとビートルズもウイングスもソロも、自分のそれぞれの表現の一部・・・ということを感じ、ビートルズの凄さも等身大で実感するようになった、ようです。それまでに、解散から20年間かかったんですね。



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この1990年の来日では、それまで封印されてきたビートルズ・ナンバーをポールは惜しげもなくライブ演奏しました。過去のことをおもうと、おどろくことでした。大半が、ビートルズ時代にスタジオで演奏して以来、ライブ演奏したことのないものばかりです。見る方の感動もなまやさしいものではありませんけど、ポール自身も、はじめてライブ演奏するビートルズ・ナンバーがどれほど新鮮であったか。


「サージェント・・・」が初演奏され、「ヘイ・ジュード」が歌われ、究極の感動は最後に「アビーロード・メドレー」が歌われたときです。ぼくは、自然に涙が出てきましたけど、恥ずかしいともおもわず、流れるままにしていました。


それから、20年間ポールは確実なペースでライブをこなしています。ビートルズ・ナンバーも次々新しいナンバーが追加され、そのたびに驚きと感動で、手古名さんがおっしゃるように「今やThe Beatlesの曲を演奏できる(特に歌える)メンバーはポールしかいないんだもの」を、実感しました。



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ポールはその自分の役割を十分意識していたとおもいます。ですから、主だったポール系のビートルズ・ナンバーをひととおりやると、どちらかというとジョン系かな、とおもうような「プリーズ・プリーズ・ミー」や「アイル・ゲット・ユー」、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」まで演奏してくれて、ファンをよろこばせてくれました。そのつど、ぼくはどれだけ感動して、ポールに感謝したかしれません。


そういう経緯から、ポールはポール系の主だったビートルズ・ナンバーをほとんどライブ演奏しています。まだやっていない作品を探すのが大変なくらいです。

  • 「マーサー・マイ・ディア」
  • 「オー・ダーリン」
  • 「ザ・ナイト・ビフォー」
  • 「アナザ・ガール」
  • 「オプラディ・オブラダ」

なんて、おそらくまだやっていませんが、ともかくこの20年間で、ポール系のビートルズ・ナンバーは、ほとんどが、ライブ演奏されたことになったわけです。


ポールには、ビートルズ時代だけでなく、ウイングス時代、ソロ時代にも、すばらしい曲がたくさんあります。それも、いままでライブ演奏されている曲は偏っていて、まだ一度も演奏されていない曲が、いっぱいあります。


贅沢なもんですけど、70年代はビートルズ・ナンバーがライブで聴きたくてしかったなかったし、ファンは、ウイングスのライブでビートルズ・ナンバーをリクエストして、ポールをいやがらせていたこともありました。


しかし、いまその渇きもだいぶ癒されました。だから、いまJashさんが、アンケートされたように、まだ演奏されていないポールの曲で何をリクエストしますか、ということになると、どうしてもウイングスやソロ時代の手つかずの楽曲になってしまうんです。


ビートルズをこれだけやってくれたポールには十分感謝しています。その上で、もっとそれからあとにポールが発表した素晴らしい楽曲にも、スポットをあててほしい、そんな気がするんですね。


だから、特に意識してビートルズ・ナンバーとソロを分けて考えているわけではないんです。まだまだライブで聴きたい曲が他にいっぱいありすぎるんです。