かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

桐野夏生著『東京島』


東京島 (新潮文庫)

32人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。


果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!


この本の広告文を読んで、本屋で衝動買いしてしまった。極限状況に置かれた人間がどうするのか?


というテーマは、やっぱりおもしろい。



無人島に、31人の男とひとりの女が残れば、そこには女をめぐる争奪戦が展開し、力の強い男がわがものにする。人間は、生存のための動物になっていく。


平凡だった主婦が、島で豹変した。女は、島のクィーンとなり、物欲も性欲も欲しいがまま。


いま女にとって、もっとも不要なものは、島に来てから病弱になった、夫だった。



極限小説は、まず発想のおもしろさで、半ば、成否が決まってしまいますね。あとは、その発想のおもしろさが、尻つぼみになることなく、読者の想像力をどこまで刺激し続けることができるか、だろうとおもいます。


この小説の第一章は、清子が、島の男たちの欲望と憧憬を一身に集めて、女としての誇りと歓びを満喫しますけれど、それは、あくまで物語の発端で、第二章から、予想もしないストーリーが展開していきます。


おもしろいです。


最近読んだ、湊さかえの『告白』に続いて、こちらも衝動的に読んで、当たりでした(笑)。