先日、71歳の遠い親戚のおばあちゃんと同居する20歳の娘の関係を、淡々とした筆致で描いた、青山七恵作『ひとり日和』を読んだばかりだけど、こちらも、20歳の娘・京子と、近くに住む変わり者のおばあちゃん(78歳)の交流を描く。
朝、「おはようございます」と京子が挨拶すると、万寿子さんは、最初は「寄り目!」と、京子が一番気にしていることをズバッというし、次にあったときは、いきなり「ブス」といわれた(笑)。
いくらなんでも、そういう言い方はないだろう・・・なんてかわいくない年寄りだろう、と激怒する京子だが、ふたりのあいだには、いいたいことをいいあう、そんな友情が芽生えていく。
象徴的な場面としては、ふたりで洋服の買い物にいったとき、女性店員から、「お孫さんですか」といわれ、ふたりが声をそろえて、「友だちです」という場面がある。
万寿子さんからガーデニングの楽しさを教えられて、京子は庭いじりに夢中になる。ふたりは、日増しに親しくなり、やがて一緒に、箱根へ旅行するまでになったが、、、
ものがたりの後半は、穏かではない。
次第に万寿子さんは、正気の時間よりも、遠い目をする時間が長くなる。ボケのはじまった万寿子さんを世話するため、京子の、汚物にまみれたすざましい奮闘が描かれる。
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京子は、寄り目のコンプレックスがあるので、自分を美人だとはおもっていない。だから、これまで恋愛は消極的で、いつも身をひいてしまうクセがついてしまった。
しかし、素直な彼女の性格は、偏屈で、友だちのいない万寿子さんにも気にいられていくし、会社の同僚・荻野くんや、近所のアパートに住む山本さんからも、好意を寄せられていく。
ふたりの男性に心を寄せられる京子は、彼女自身がおもっているほど、魅力のない女性ではないのだ。読み終わるころには、京子という自然体で生きる女性を、読者も応援したくなってしまう・・・そんな気がする。