現存する成瀬巳喜男作品は、失敗作も含めて全部見たい、とおもっている成瀬映画のファンだから、まずはこの作品も見られてよかったです。
そのうえでいうわけですけど、<女の半生>を描く、というような、大時代ドラマは、成瀬巳喜男の作風にあってないような気がしました。
成瀬巳喜男+高峰秀子という黄金のコンビですから、つまらないこともないのですが、このふたりが組んだ数々の傑作のなかにおくと、色褪せて見えます。
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【追記】
名作といわれる『浮雲』も、<女の半生>を描いたものだけれど、こちらは、女にだらしない好色な男(森雅之)と、その男の不誠実を知りながら、男から離れられない女(高峰秀子)の<因果な関係>がリアルで、見ごたえがありました。
しかし、この『浮雲』でも、最後に出てくる「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」というような大時代なセリフは、ぼくの好みではいらない、とおもいます。
映画が終わっても、話の展開は、実人生と同じように、決着がつかないのが成瀬映画。
なのに、『浮雲』は、主人公の女性が、夫に見守られながら布団の上で亡くなり、見ている夫が枕元で涙を流す・・・という、成瀬作品らしからぬセンチメンタルな終わり方で、ぼくはそれもいまひとつ不満でした。