かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

森見登美彦著『新釈 走れメロス 他四篇』

新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)
近代文学の名作を、京都を舞台にパロディー化した、パスティーシュ(原作を模倣した)小説集。もとの作品は、以下のとおり。


巻末の解説(神山健治氏)に、「しかし読み進めれば読み進めるほど、その換骨奪胎の巧みさに魅了させられてしまった」とあるけれど、本当に、この「換骨奪胎」は成功しているのかな?


京都が舞台であることと、むかし愛読した原作がどのように姿を変えてよみがえるのか・・・興味をもって読んでみましたが、おおげさな身振り手振りで観客の気を惹こうとする、お笑い芸人を連想してしまいました。


パスティーシュ小説の先人としては、名古屋出身をウリに登場した清水義範を想起します。


清水義範の『蕎麦ときしめん』(イザヤ・ペンダサンの『日本人とユダヤ人』を下敷きにしたパスティーシュ小説)をはじめて読んだときの、新鮮な可笑しみは、いまも記憶にあざやか。


『新釈 走れメロス 他四篇』は、「換骨奪胎」をやり過ぎて、原作から離れすぎてしまったような気もしました。