かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

松本佳奈監督『マザーウォーター』(上映中)


かもめ食堂「めがね」「プール」など、人と場所との関係をテーマにした作品を撮り続けてきたプロジェクトが、豊かな水の流れを持つ街・京都を舞台に描いた人間ドラマ。ウイスキーしか置かないバーを営むセツコ、コーヒー店を開いたタカコ、豆腐屋のハツミら“水”にこだわる3人の女と、彼女たちにかかわる人々の日常をつづる。監督は本作が長編デビューとなる新鋭・松本佳奈。

(「映画.com」のストーリー解説から)


一連の<まったり路線>の最新作(笑)。


かもめ食堂」、「めがね」を撮った荻上直子監督は、このシリーズから去って、独自にもたいまさこ主演で『トイレット』を撮ったばかり。でも、この「まったり路線」は、荻上監督を離れて、まだ続いていたんですね。


出演は、小林聡美小泉今日子加瀬亮市川実日子永山絢斗光石研もたいまさこ・・・それに加えて、最後まで誰の子かハッキリしない赤ちゃん。


これだけのメンバーが、京都の町はずれで、互いのお店を行ったり来たりする。


全員が関東方面からの移住者らしく、会話は東京言葉で、関西弁はほとんど出てこない。京都の有名な寺社が映るわけでもないから、ここが京都であることが、解説でも読まないとわからない。


京都に住んでいるjinkan_mizuhoさんなら、きっとロケ地がどこか、桜の咲くこの大きな川がどこなのか、すぐにわかるのだろうな、と映画を見ながらおもう。



出演者は、みなひとりで暮らしていて、生活感が乏しい。小林聡美は、バーをやっているけれど、ウイスキーだけしかない。ビールもつまみも置いていない。


小泉今日子は、喫茶店をやっているけど、出すのはコーヒーだけ。軽食もモーニング・サービスもやっていないようだ。


市川実日子は、ひとりで豆腐屋さんをやっている。若い娘がひとりで経営しているらしい。


どのお店も、ほとんどお客さんがなくて、ここに登場する出演者が互いに時々顔を出すけれど、大体が閑散としている。これで経営が成り立つとはおもえないけど、そういうことはこの作品では考えなくていいのだろう。


会話はボツボツ、途切れ途切れで、なにか具体的な問題が進むわけではないので、禅問答を聞いているようで、わかったようなわからないような・・・たぶんわかる必要もないのだろう。



市川実日子が、水の中から掬って取り出す、まっしろな豆腐がおいしそうだ。この映画みたいに、お店の前の縁台にすわって、そのまま醤油をかけて冷たい豆腐を食べてみたくなる。


小林聡美は、グラスにウイスキーをいれて、氷をいれてゆっくりかきまぜ、最後に水を割って、また丁寧にかきまわして、「どうぞ」と、水割りを加瀬亮に差し出す。わたしも、ひさしぶりに、ウイスキーの水割りを(できれば映画みたいに銘柄は「山崎」で)飲んでみたいな、とおもった。


小泉今日子は、おいしそうなドリップコーヒーをいれてくれる。この店ではサンドイッチも、ゆで卵もない。音楽などはかかっていなくて、硝子ばりなので、店の外をゆっくり眺められる。こんな店で、熱いブラック・コーヒーを啜りながら、読書に疲れたら、ぼんやり往来の景色を眺めているのも、いいかもしれない。


つまりは、そんな映画です(笑)。